★CO2削減の計算法で論争、省エネ機器の導入企業から不満
企業が国に二酸化炭素(CO2)などの排出量を報告する制度を巡り、ガス会社が販売する
省エネ機器「コージェネレーション(熱電併給)システム」を購入した企業から、
「国の計算法では排出削減努力が正当に評価されない」と不満が出ている。
省エネによって、どの発電所のCO2排出が減ったかと考えるかで、排出量が異なるためだ。
計算法を巡ってはガス会社と電力会社の見解も対立し、排出量取引制度の導入が課題になる中、
今後論議になりそうだ。
環境、経産両省は今春、地球温暖化対策推進法に基づき、大企業に報告させた2006年度の
温室効果ガス排出量を初公表。その際、コージェネを導入した日本ゴム工業会などの14社が
「公表数値はコージェネの削減効果を適切に反映していない」などと批判した。
これらの企業は、コージェネによる「自家発電」分は電力会社から電力を購入せずに済む。
問題は、この節電分でどれだけCO2排出を減らしたとみなすか。
発電所の中でも、火力はCO2排出量が多く、原子力や水力は少ないが、国は原則として、
全発電所平均で排出削減量を計算する。
一方、ゴム工業会は、電力業界は電力需要の短期変動には主に火力発電で対応しているとして、
火力分が減ったと考えて計算すべきだと主張する。
ブリヂストンや横浜ゴムなどは、国と自ら主張する計算法でそれぞれ求めた二つの数値を提出。
その差は年間約5万〜14万トン。約9000〜2万5000世帯の年間排出量に相当し、
排出量取引を導入する欧州連合の相場(1トン約4000円)で計算すると、多い企業で
差額は数億円に上る。
両省は「CO2排出量は全発電所平均の使用電力で計算しており、節電分を差し引く時だけ
火力で計算するのは整合性を欠く」とするが、国は、京都議定書の目標達成計画の削減見通しでは、
省エネ機器の一部は節電分を火力で計算している。ゴム工業会は「国自身が火力で計算している」
と反論材料にするが、両省は「排出量と削減見通しの計算は別」との立場だ。
日本ガス協会は電力需要の変動に伴う排出増減は火力で、電気事業連合会は国と同様に
全発電所平均で計算すべきと主張。今後、コージェネ以外の省エネ機器の排出削減量でも
計算法を巡って論議が予想される。
◆コージェネレーション(熱電併給)システム
天然ガスや重油を使って自家発電し、その排熱を空調や給湯などに活用する省エネ機器。
ガス会社や石油会社が光熱費の節約につながるなどとして1980年代から工場やホテルなどの
事業所を中心に販売している。発電能力に応じて価格は数百万円〜数億円で、
設置件数は2007年3月現在で約4万3000件。
讀賣新聞
http://www.yomiuri.co.jp/eco/news/20080801-OYT1T00455.htm