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中村さんは宇宙から地球に落ちてきた隕石(いんせき)や細かいちりの研究者で、
分析に参加した一人。九大には50個ほどがあり、東京大や大阪大、神戸大なども
分析に加わった。
この極めて小さなちりがなぜ重要なのか。「太陽―地球間の距離の30倍も離れた
太陽系外縁部の物質だからです」と中村さんは話す。
ビルト2彗星は、現在は木星の重力によって軌道が変わり太陽に接近するように
なっているが、もともとは太陽系の果ての「エッジワース・カイパーベルト」と呼ばれる
領域の天体。惑星から降格された準惑星・冥王星など、氷でできた小天体が無数に
集まっている場所だ。そこにある物質は、約46億年前に太陽系ができた当時の状態を
そのまま残しており、そんな物質でできている彗星を詳しく調べることで、太陽系が
どのような歴史を経てきたのかがわかると期待されている。
各国の研究チームの分析の結果、ちりの中に、かつて1400度以上の高温に
さらされてできた物質が確認された。中村さんらは、兵庫県の大型放射光施設
「SPring8(スプリング8)」などにちりを持ち込み、高温下でできた物質の性質の
解明などに取り組んだ。国立天文台の渡部潤一准教授は「ちりはかつて太陽の
近くにあり、何らかの原因で遠い太陽系外縁部まではじき飛ばされたということになる。
太陽系ができる過程で大規模な物質の循環があった、というイメージができつつある」と話す。
現在は、太陽系ができる前に作られた可能性がある物質が発見されるなど、
各国が競って研究を進めている。
「現在考えられている太陽系の歴史が、これから数年のうちに
変わってくるかもしれない」と中村さん。
「これからは独自の研究を進め、太陽系外縁部で天体がどの
ように誕生したかを解明したい」と意気込んでいる。(福島慎吾)
終わり