★【社説】温暖化対策 米国の譲歩は前進だ
北海道洞爺湖サミット最大のテーマである地球温暖化対策で、G8は「2050年半減」の
目標を共有することで合意した。途上国の参加に含みを持たせ、米国の譲歩を引き出したのは評価できる。
「(温室効果ガスを)二〇五〇年までに半減」は、昨年の独ハイリゲンダム・サミットで、
日本、欧州連合(EU)、カナダが提案した数値目標だ。
その時は、米国の強い抵抗に遭い、「真剣に検討する」というあいまいな表現にとどまった。
洞爺湖サミットでは、このあいまいさからどれだけ前進するかが、最大の焦点とされていた。
サミット開幕前の日米首脳会談では、福田康夫首相の説得にもかかわらず、ブッシュ大統領が
数値目標の明記にはあくまでも反対の姿勢を示していた。が、最終的には、削減数値目標を
「気候変動枠組み条約(UNFCCC)のすべての締約国と共有」とくぎを刺すことで、
京都議定書では温室効果ガスの削減義務を課されていない中国、インドの参加に含みを持たせ、
米国の譲歩を引き出した。
「2050年までに半減」は、これで世界共通の目標として正式に認知されたと言えるだろう。
また「可能な場合は」との条件付きながら「野心的な中期の国別総量目標を実施する」と、
中期目標の設定にも理解を示した。その点でも、前進したと言っていい。
ただし、「大成功」とも言い難い。削減の基準年が示されていないうえ、国連気候変動に関する
政府間パネル(IPCC)が求める「野心的なシナリオ」には、ほど遠い。気温上昇を生命や経済に
影響の少ない二度程度に収めるためには、2050年には2000年比で、50−85%の削減が必要だ。
ビジョンを共有しただけでは、地球温暖化は止められない。
主要排出国でもあるG8は、国別の中期目標を早期に掲げ、率先して削減に取り組むべきだ。
温暖化の悪影響を受けやすい途上国への省エネ技術移転を進め、温暖化に適応するための
資金メカニズムを確立するなど、途上国が参加しやすい環境を整える役目もある。
最終日には、主要経済国会合(MEM)が開かれる。中国、インドも参加する米国主唱の会議である。
さらに足場を固め、ポスト京都議定書の枠組みを決める2009年の締約国会議(COP15)で
野心的なシナリオが描けるよう、弾みをつけてもらいたい。
中國新聞
http://www.chunichi.co.jp/article/column/editorial/CK2008070902000094.html