前脚だけで懸命に進む。
交通事故で後ろ脚2本を失った雑種のセラピードッグ「二郎」が27日、
岩手・宮城内陸地震の被災者がいる宮城県栗原市の避難所を慰問した。
「地震で失ったものは多いが、二郎のように前に進まないと……」。
2本足の二郎が被災者に勇気を与えた。
二郎(推定10歳)が現在の飼い主の獣医師、菅原康雄さん(60)=仙台市宮城野区=
の元に運び込まれたのは5年前。車にはねられ、パトカーで連れてこられた。
一命は取り留めたが、動かなくなった後ろ脚は両方切断せざるをえなかった。
しばらくすると、2本の前脚で立とうとするようになり、1年後、前脚だけで歩くまで回復した。
人が動物とふれあうことで落ち込んだ気持ちを癒やしたり、自信をもつなど精神的な健康を取り戻す、
アニマルセラピー(動物介在療法)活動もしていた菅原さんは、ハンディのある人に二郎を見て
元気になってもらいたいと、セラピードッグとして訓練した。
「優しい二郎は子供に人気。二郎も、子供たちと一緒にいるのが好き」と菅原さん。
「二郎と会って、僕も頑張ろうと思いました」−−。小学生からこんな感想文が寄せられたこともある。
菅原さんは、地震で日常生活を奪われた人たちにとっては、二郎の存在そのものがエールになると考えた。
昨年の新潟県中越沖地震では、他のセラピードッグを連れて避難所を訪問したが、
二郎は車が嫌いで長距離は可哀そうなため連れていかなかった。
二郎にとって被災者に接するのは27日が初めてだった。
避難所前。二郎は2本足で後ろ脚部分を引きずるように駆け回った。
子供に抱きつかれると、まるで笑っているかのような表情を見せる。いつもの二郎と同じだった。
避難所に来て1週間以上になる耕英(こうえい)地区の主婦、熊谷早百合さん(34)は二郎の頭をなでながら
つぶやいた。「気力も失いかけていたけど、頑張らないといけないね」。
その気持ちに応えるかのように二郎は目を細めていた。
(画像) 避難所で子供にかわいがられる犬の二郎
http://mainichi.jp/select/jiken/20080614/news/images/20080628k0000m040017000p_size5.jpg ソース
http://mainichi.jp/select/jiken/20080614/news/20080628k0000m040144000c.html