★欧州経済に暗雲 インフレ懸念や域内格差 日本企業に影響も
欧州経済の動向に国内の市場関係者や産業界の注目が集まっている。
米国経済が失速する中、世界経済の成長を下支えしてきた欧州だが、
景気減速とインフレへの懸念が高まり、「域内格差」も目立ち始めた。
ユーロ高・円安を背景に、国内企業の欧州向け輸出は今のところ堅調だが、
先行きは不透明だ。(柿内公輔、塩原永久)
米国経済がサブプライム(高金利型)住宅ローン問題で調整を深める中、
ユーロ圏は新興国とともに世界経済のエンジンを担ってきた。
2007年の実質国内総生産(GDP)も前年比2・6%増と底堅かった。
しかし、今年に入って、ユーロ圏経済は1〜3月期こそ0・8%成長と
踏ん張りをみせたものの、景気の減速基調が強まっている。
ニッセイ基礎研究所の伊藤さゆり主任研究員は
「1〜3月期の強さは、暖冬による建設投資の拡大という一時的要因が大きい。
足元では企業活動のペースは鈍化している」と指摘する。
国によって成長の足並みも乱れ始めた。
ドイツとフランスは景気減速のテンポは穏やかだが、住宅市場が落ち込む
スペインや失業率の高いアイルランドは景気悪化が目立つ。
原油高などに伴う物価上昇もリスク要因だ。欧州中央銀行(ECB)は6月、
今年のユーロ圏消費者物価の予想伸び率を3・4%とし、
3月時点から0・5ポイント引き上げた。
原材料価格の高騰が企業マインドを冷やし、住宅投資や個人消費への影響も徐々に拡大。
ECBは政策金利を昨年6月から据え置いているが、インフレを押さえ込むため、
トリシェ総裁は「(次回7月会合で)小幅な利上げの可能性を排除しない」と、
路線転換を打ち出した。
利上げ観測を背景に、外国為替市場でユーロ高が続いていることも、
欧州域内の輸出関連企業には重しとなっている。
伊藤氏は「今年下期から来年上期にかけて、ユーロ圏の成長率は抑えられる」とみている。
ただ、日本の輸出関連企業にとっては、対米輸出の不透明感が強まっていることもあり、
1ユーロ=160円台後半のユーロ高・円安は追い風だ。ユーロはドルに対しても
強含んでおり、欧州でのエアコン販売が伸びている三菱電機は、取引通貨の米ドルから
ユーロへの切り替えを進めている。今年度の想定為替レートは1ドル=105円、
1ユーロ=155円で、ユーロ建て欧州向け輸出の好調は業績の上ぶれ要因となりそうだ。
だが、欧州でも日本と同様、需要の増大を伴わない「悪い物価上昇」と景気後退が
同時に進むスタグフレーションが現実味を帯び、欧州経済が今後大きく失速するような
事態になれば、市場や日本の産業界にもショックが広がりそうだ。
FujiSankei Business i. 2008/6/24
http://www.business-i.jp/news/kinyu-page/news/200806240072a.nwc