★「食」に揺れた1年 苫小牧 根付いた安全志向 通報も急増(06/21 14:19)
【苫小牧】苫小牧市の食肉加工製造卸会社ミートホープ(破産手続き中)の
食肉偽装事件が発覚してから20日で一年が経過した。
その後も「白い恋人」や「赤福」、「船場吉兆」など食の事件は後を絶たない。
引き金となった舞台、苫小牧では事件の教訓は市民や企業側に
根付きだしたが、再就職の決まらない元従業員もいるなど傷跡も残っている。
「店内で加工した肉製品に異物が混入したかも」。
今年4月、苫小牧市内のスーパーから苫小牧保健所に通報があった。
異物は見つからなかったスーパーは店頭におわびの張り紙をして、商品を回収した。
ほかに2つの食品会社から製造日ラベルの間違いなどの連絡があった。
保健所の担当者は「事件前にはなかったこと。企業側に自覚が出てきた」と話す。
対応の遅れを指摘された北海道農政事務所や胆振、日高両支庁などとの
横の連携を密にする会議も年4回開かれるようになった。
作る側にも変化が見られる。ある食品加工業者は牛ひき肉と豚ひき肉を
作る間に必ず機械を洗浄するようになった。
同社の役員は「前はやってなかった。コストはかかるがやらなければ」と話す。
市民も敏感だ。苫小牧保健所には食に関する通報が格段に増えた。
事件前の2007年5月は10件、6月も10件だったが、事件後の7月は30件に激増。
07年度の通報は前年度の2.3倍の178件に上った。
一方、従業員は事件で職を失った。
再就職を希望した47人(中国人実習生をのぞく)中、約3割の14人は決まらなかった。
断念した70代の男性は「被害がないから、(元社長は)半分は悪くないと思っているはず」と吐き捨てた。
中には元プロレスラーで前参院議員の大仁田厚さんと共同で「正直コロッケ」を販売する準備を進める元従業員も。
近く市内に店舗を構える計画という。
多くの人は「そっとしておいて」と事件に触れたがらない。
元幹部で告発者の赤羽喜六さん(72)=胆振管内白老町=は
「事件を放置した行政は許せないが、(元社長に)恨みはない。疲れた。静かに暮らしたい」と漏らした。
(ミートホープ事件取材班)
北海道新聞
http://www.hokkaido-np.co.jp/news/chiiki/100188.html