★「国籍法」違憲 時代に合わない法を正した(6月5日付・読売社説)
社会の変化に呼応し、法律を柔軟に変えていく必要性が改めて示されたということだろう。
最高裁大法廷は、国籍法の規定を憲法違反とする判決を言い渡した。
最高裁が法律の規定を違憲と判断したのは、8例目である。
日本人の父、フィリピン人の母を持つフィリピン国籍の子ども10人が、日本国籍の確認を求めていた。
10人はいずれも非嫡出子(婚外子)で、日本で生まれた後、父から認知された。
父が日本人、母は外国人という非嫡出子の場合、生まれる前に父から認知されれば、日本国籍を取得できる。
だが、原告のように、認知の時期が生まれた後であると、父母が結婚しない限り、日本国籍は得られない。
父母の結婚を条件とした国籍法の規定に対し、判決は、「合理的理由のない差別」と断じ、
憲法が保障する法の下の平等に違反するとした。
「家族生活や親子関係に関する意識の変化や多様化を考慮すれば、今日では実態に適合するとはいえない」とも指摘した。
国際結婚や事実婚、シングルマザーなどが増えている現状を考慮した現実的な判断といえる。
一部の裁判官は、補足意見で、認知の時期により区別することについても、「合理性を説明することは困難」と
批判した。この区別によって国籍が異なる姉妹もいる。国籍法の規定は、こうした不自然な状態も招いてきた。
政府は、日本国籍を与えるに当たり、日本と密接な結びつきがあるかどうかを重視している。
その考え方自体は当然といえる。
判決も、父母の結婚を、日本と子どもの結びつきを示すものとしたことについて、
かつては「相応の理由があった」とした。
法務省は、国籍法の改正を迫られる。日本での居住歴など、我が国との結びつきをはかる新たな尺度を
早急に検討しなければならない。国籍の取得を目的とした「偽装認知」の対策も必要になってくるだろう。
同様の境遇の外国籍の子どもは、日本国内に数万人いるともいわれる。今回と同じくフィリピン人の国籍が
争われた訴訟で、最高裁は2002年、合憲判断を示し、出生後の認知だけでは日本国籍を認めなかった。
その後6年で最高裁は新しい判断を打ち出した。変化する社会情勢に法律が合致しているかどうか−−。
そのチェックが最高裁に課せられている重い責務である。
讀賣新聞
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20080604-OYT1T01059.htm