タクシーの「全面禁煙」が全国各地に広がる中、大阪府内では実施に向けた動きが極めて鈍い。
背景に「禁煙化で客が減るのでは」という激戦区ならではの強い不安感があるようだ。
国土交通省によると、業界団体の呼びかけで、ほぼすべてのタクシーが禁煙になっているのは
16都県に上り、東日本が積極的で、西日本は少ないという「西低東高」の傾向。名古屋では
禁煙で売り上げが伸びており、専門家らは「禁煙化は時代の流れ。乗り遅れるな」と指摘する。
あなたは禁煙化派? それとも喫煙OK派?−−。【小林祥晃】
タクシーの全面禁煙は、健康増進法の施行(03年5月)を受け、06年4月に大分市の法人・個人の
業界団体が初めて実施。昨年11月からは愛知県で、今年1月からは東京都と埼玉県で、それぞれの
業界団体が導入した。近畿では奈良県タクシー協会が5月から実施を予定している。
大阪府では「国際興業大阪」(大阪市)が2月25日から、府内で営業中の全577台を禁煙車にしたが、
一部の動きにとどまっている。
府内で7割の法人タクシーが加盟する「大阪タクシー協会」は昨年、各社に全面禁煙の賛否について
アンケート。回答した110社のうち、反対74%、賛成21%だった。
反対理由は「喫煙客を他社に奪われる」「喫煙客とのトラブルが心配」が目立つ。大阪市内で営業する
愛煙家の男性運転手(41)は「新幹線やホテル、御堂筋まで禁煙。タクシーなら吸えるとの乗車客も多い」
と反対する。
50代の男性運転手は「業界で決めても、きっと『喫煙OK』の新規参入業者が出てくる」と不安顔。
府内のタクシー台数が、規制緩和前(02年1月)の約2万台から約2万3000台(昨年3月)に増えた
ことも背景にあるようだ。
一方、昨年5月から全面禁煙とした名古屋タクシー協会の永山明光専務理事は「客離れやトラブルの
不安もあったが、実施してみると『車内がさわやか』などと好評。売り上げも伸びた」と話す。
公共施設の禁煙化を呼びかけるNPO法人「子どもに無煙環境を」推進協議会(大阪市中央区)の
野上浩志理事(60)も「運転手の受動喫煙被害も心配。健康と利益のどちらが大切か考え直してほしい」
と指摘している。
http://mainichi.jp/kansai/news/20080304ddf001040002000c.html