米低所得者向け住宅融資「サブプライムローン」問題の影響で経営難に陥った英国の中堅銀行
ノーザン・ロックは、サブプライム問題で打撃を受けた欧米の金融機関では初めて、一時国有化
されることが決まった。欧米の金融機関は損失が依然拡大しており、金融不安を払しょくするた
め、公的資金の投入による抜本策を求める声が、さらに強まる可能性がある。 (ロンドン 中村宏之)
ロンドン中心部のオックスフォード・サーカス近くにあるノーザン・ロックの支店。一時国有
化の発表から一夜明けた18日の午前9時過ぎ、入り口に「預金は保護されており、取り扱いに
変わりはありません」という張り紙が目にとまった以外は、業務が平常通り行われていた。
ノーザン・ロックの各支店では2007年9月、英国の銀行として約100年ぶりに取り付け
騒ぎが発生した。サブプライム問題による金融市場の混乱で、市場からの資金調達が難しくなり、
信用不安が急速に広がったためだ。
自力での再建は難しく、英ヴァージン・グループとノーザン経営陣がそれぞれ今年2月までに、
ノーザンを買収して再建に乗り出す案を政府に示した。ただ、昨年9月以降に政府が実施した公
的資金による総額250億ポンド(約5兆3000億円)とみられる巨額融資の返済条件などを
巡り、両者と政府の調整は難航した。
アリステア・ダーリング財務相は17日、仮に民間側が買収して再建に失敗すれば、こうした
政府の融資が焦げ付くなどして「納税者の負担が膨らむ可能性がある」と、一時国有化を判断し
た理由を説明した。
これまでの英政府の対応を巡っては、昨年秋の取り付け騒ぎの際に預金を全額保護するとの判
断が遅かったことや、経営問題が表面化して国有化を決定するまで約5か月かかったことなどか
ら、金融関係者からは「常に後手に回っている」という批判も強い。
英政府は今後、ノーザンの株式や資産を取得し、リストラなどを進めて再建に取り組む。経営
体力の回復を見極めた上で、国有化を解いて民間企業への売却などを検討する方針だ。
英メディアによると、一時国有化による英政府の負担は約550億ポンド(約11兆6000
億円)にのぼる見通しだ。再建に失敗すれば国民負担が膨らみ、ブラウン政権への批判がさらに
強まるのは間違いない。
YOMIURI ONLINE(読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20080219mh03.htm