交換所通さぬ転売続出
米国の低所得者向け(サブプライム)住宅ローンの焦げ付き問題が、東京のパチンコ店を直撃している。
サブプライム問題で金価格が高騰、特殊景品に金を使う東京では、景品をより高いレートで転売する客が続出し、
業界を支える交換方式の根幹を揺るがしかねない事態になっている。
金を使っていない県内への影響はないが、東京では交換単価を上げて対抗するも金価格の上昇は止まらず、
景品価格の変動制も検討し始めている。
パチンコの出玉は、3点方式と呼ばれる独特のやり方で現金化される。
客はパチンコ店で出玉を特殊景品と交換、これを景品交換所に持ち込み、現金化する。
交換所は景品流通業者に景品を渡し、再びパチンコ店へ戻す。
直接、パチンコ店と客が、現金のやり取りをしないことでパチンコはギャンブルではないと見なされている。
●先進的取り組み
だが、ライター石やボールペン、メダルなど見合った価値のないものを形式的に交換しているのが実態だ。
東京都遊技業協同組合は91年から、換金レートに見合った価値あるものを景品にし、
3点交換の矛盾を解消しようと、金0・3グラム(千円)と1グラム(2500円)を埋め込んだ2種類のカードを使っている。
形式化している交換方式をより実体を伴うものにしようという先進的な取り組みだった。
東京都の他に、山梨県の一部でも金の景品を使っているという。
県内でも同様のカードを景品にしているが、金は埋め込んでいない。
県遊技業協同組合は「それ相当に見合ったものを入れている。中身は店ごとに違う」としている。
●遊技しない客も
しかし、金価格上昇が、3点交換方式の矛盾を明らかにした。
国内の金相場を決める田中貴金属工業(東京)によると、世界的な好景気で、
金をはじめ鉱物資源や穀物などへの投資熱が加速。
さらにサブプライム危機によるドル安も重なって、投機資金は安定した金相場に流れ込んだ。
昨年9月は1グラム2645円、10月2832円、11月には最高で3070円と高騰を続けた。
金価格上昇とともに、交換所に持ち込まず、転売して利ざやを上げる客が増え、
中には交換所の前で客と「商談」する買い取り屋も現れた。
都遊協には昨年11月だけでパチンコ店から、100件を超える相談があったという。
店で玉を借り、遊技せずにそのまま特殊景品に交換、転売するケースも出てきた。
都遊協は、犯罪ではないもののこのままでは「遊技」が体をなさなくなると、
金1グラム入りの景品にシールを張って、換金価格を3500円に引き上げた。
●次の手迫られる
しかし、年が明けても金価格の上昇は止まらず、1月は最高で3210円、平均でも3104円となった。
田中貴金属は「まだまだ上がる」とし、3500円を上回るのも時間の問題とみている。
都遊協の道本佳治専務理事は「次の手を打たなければ」と話し、
交換単価を日ごとの金価格に応じて変動させる方法も検討している。
◇キーワード 金の相場
田中貴金属工業によると、国際情勢が不安定になると、相場が大きく崩れず、安定している金を買う動きが活発になる。
80年はソ連がアフガン侵攻した前年の平均1グラム2219円から同4499円に跳ね上がった。
00年には、1014円と73年以来の安値を記録したが、
米国同時多発テロの01年以降、値を上げ、05年には1619円になった。
米国経済の失速も重なり、高騰を続けている。一方、原油価格の高騰で中東のオイルマネーがだぶついたことも一因とみられる。
イスラムの富豪は戒律で金利を受け取れないため、オイルマネーが金に流れ、価格高騰に拍車をかけたともいわれている。
ソース
http://mytown.asahi.com/yamagata/news.php?k_id=06000000802070001