【ワシントン=宮崎健雄】イラクのサダム・フセイン元大統領が2003年12月の拘束後、米連邦捜査
局(FBI)の取り調べに対して行った供述の詳細が27日明らかになり、国際テロ組織アル・カーイダの
指導者ウサマ・ビンラーディンを「狂信者で信用できない」と述べていたことなどがわかった。
取り調べを担当した現職捜査官ジョージ・ピロ氏が、同日放映された米CBSのインタビューで語っ
た。供述は、大量破壊兵器開発疑惑や1990年のクウェート侵攻の内幕にも触れており、注目される。
ピロ氏によると、元大統領は、ビンラーディンを政権の脅威と考えて警戒感を抱いており、「交流する
ことも、仲間と見られることも望んでいなかった」という。米政府は2003年3月のイラク戦争に踏み切
った理由として、フセイン政権がアル・カーイダと連携、大量破壊兵器使用を含む反米テロを企ててい
たと主張したが、元大統領本人が「共闘」を否定した形だ。
大量破壊兵器についても、元大統領は、1990年代に国連査察で大半は解体されたが、隣国イラ
ンをけん制するため、その事実を秘密にしていたと供述。ただ、再び核などの大量破壊兵器を開発す
る考えはあったという。元大統領は03年当時、米軍の本格攻撃はないと考えていたことを明らかにし
、米側の意図を「見誤った」とも供述している。
一方、ピロ氏が90年のクウェート侵攻の理由について尋ねたところ、元大統領は、原油の盗掘など
の懸案協議に向け外相を派遣した際、クウェート側から「すべてのイラク人女性を売春婦として差し出
せ」と侮辱されたといい、「罰を下したかった」と述べたという。侵攻に関し、元大統領が感情的な理由を
明らかにしたのは初めてとみられる。
また、フセイン政権が1980年代後半にイラク北部で化学兵器を使用し、クルド人を大量に殺害した
ことについては、自ら命令を下したことを認め、「必要だった」と語った。
CBSは25日に放送内容の一部を報じた上で、27日に全編が放送された。
レバノン出身でアラビア語が話せるピロ捜査官は、元大統領と約7か月間かけて人間関係を築き、
詳細な証言を引き出した。
捜査官は看守と打ち合わせ、ブッシュ大統領とも直接話せる高官のふりをしたり、きれい好きな
元大統領にペーパータオルを差し入れたりするなど、あらゆる手法で信頼を得ていった。元大統
領の誕生日の時は、捜査官が母親の作ったクッキーを持ち込んで祝ったこともあったという。
ソース:読売新聞
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20080128-OYT1T00467.htm