伊藤一長・前長崎市長(当時61歳)が銃撃され、死亡した事件で、殺人と公職選挙法違反
(選挙の自由妨害)などの罪に問われた元暴力団幹部、城尾哲弥被告(60)の初公判が
22日、長崎地裁(松尾嘉倫(よしみち)裁判長)で始まった。城尾被告は「起訴状に書いて
ある事実はその通りです」と起訴事実を認め、「心よりおわび申し上げます」と遺族らに
謝罪した。検察側は冒頭陳述で、城尾被告が金子原二郎・長崎県知事も一時、襲撃対象に
入れていたことを明らかにした。
城尾被告は起訴事実の認否で、「日々、合掌して伊藤様のごめい福をお祈りしています」
とも述べた。弁護側は殺意の発生時期などを争う方針を示す意見を述べた。
検察側は冒頭陳述で、城尾被告が暴力団組織の会長代行に就任した02年5月ごろから、
組への上納金(1カ月30万円)や毎月の慶弔費など約10万円の資金繰りに困り始め、
経済的に追い込まれたと指摘。そのうえで、市道工事現場で起こした自損事故の補償など
を巡り、城尾被告が市に不当要求を繰り返したが、対応に不満を募らせ、暴力団幹部として
の意地を見せ、世間を驚かせようなどと考え、自暴自棄になった経緯を明らかにした。
05年7月ごろには、県内の知人男性(56)に対し「(伊藤)一長(前市長)のタマ取らんか。
(金子)原二郎でもいいぞ。大事件を起こせば後世に名前が残る」と依頼するなど長崎市、
県のトップの襲撃を考えるようになった。最終的には伊藤前市長が出馬を表明した昨年2月
ごろから前市長殺害を計画したことを指摘した。
これに対し、弁護側は殺害の事実や殺意は認めたが、公判でも「殺害直前、前市長の姿を
見て殺意を抱いた。拳銃を持って行ったのは威嚇のためだった」などと計画性を否定、
現場で衝動的に殺意を抱いたと主張する。【阿部弘賢】
【ことば】長崎市長銃撃事件
選挙期間中だった昨年4月17日午後7時52分ごろ、JR長崎駅近くの選挙事務所前で、
伊藤前市長が、城尾被告に背後から拳銃で銃弾2発を撃たれ、約6時間半後の翌日未明に
死亡。城尾被告は取り押さえられた際に実弾26発も所持しており、殺人、公選法違反、
銃刀法、火薬類取締法違反の罪に問われている。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20080122-00000029-mai-soci