医療関係の各学会が優れた技量や知識を備えていると認めた医師に与える「専門医」
「認定医」の資格試験で、01年以降、受験に必要な臨床経験を流用したり申請書類を
偽造したりする不正を行った医師が54人に上ることが朝日新聞の調べで分かった。
専門医・認定医の資格はホームページなどで表示され、患者が病院や医師を選ぶ基準
の一つになっているが、不正が続けば制度の根幹が揺らぎかねないとして、各学会は
罰則規定の整備を始めた。
資格試験を巡っては、すでに昭和大や東京医科大などで、医師が臨床経験を証明する
書類を不正に作成していたことなどが発覚している。
各学会から選出された理事らで構成し、制度整備に取り組む「日本専門医認定制機構」
に加盟している64学会(06年時点)によると、01年から今年にかけて、11学会の専門医
・認定医の試験で計54人の不正があった。
このうち、受験者が受け持った患者の病歴や治療、所見などをまとめた病歴要約や、
指定された学会や教育セミナーなどの研修歴の証明書など、受験申請に必要な医師の
経歴にかかわる書類の不正が8学会で37人と、全体の7割近くを占めた。
病歴要約の不正は24人。ほかの医師の症例を流用したり、複数の受験者が同じ患者
についてほぼ同じ文章で書類を提出したりするほか、症例を偽造する例もあった。虚偽
の研修歴を記載した証明書を提出した受験者は13人いた。
ほかにも、試験の申込書などに必要な指導責任者の署名と押印を偽造していた受験者
や、事前に試験問題を漏らしていた大学教授など、計17人の不正が見つかった。
相次ぐ不正を受け、各学会は防止策に乗り出している。
日本内科学会は03年に罰則規定を設け、病歴要約を不正に作成した受験者を不合格
とし、3〜5年ほど再受験を認めないなどの処分を実行。さらに今年、提出を義務づけた
要約の症例数を原則21例から18例に減らした。
日本小児科学会は今年、不正の処分手続きを規則に明記。日本臨床腫瘍(しゅ・よう)学会
も罰則規定を検討している。研修歴の証明書の不正が続いた日本泌尿器科学会は、08年
から研修への参加を電子データで管理し、流用を阻止する方針だ。
専門医は02年から電話帳や新聞などでの広告表示が可能になった。所管する厚生労働省
医政局は「不正が極めて悪質で学会が何の対策もとっていない場合、広告表示を認めない
こともありえる」としている。
http://www.asahi.com/national/update/1230/TKY200712300154.html