大手プラントメーカー「荏原製作所」(東京都大田区)が2004〜06年、同社の代理店が
東京国税局から追徴課税された法人税などを補てんするために、代理店側に計3億2000万円を
支払っていたことがわかった。
代理店は自治体が発注するごみ焼却施設などの受注工作を担当していた。
荏原は3億2000万円を帳簿上、経費の「販売手数料」としていたが、税務当局に対しては課税対象の
「交際費」として処理しており、正規の手数料でないことを自ら認めた形だ。
関係者は「不正な受注工作の口止め料の意味もあった」と証言している。
関係者によると、追徴課税され、滞納していた税金の穴埋めを、荏原にしてもらっていたのは、
同社の代理店だったコンサルティング会社「オーエム(OM)プラント」(港区)。
自治体のごみ焼却施設や汚泥・し尿処理施設を受注するため、予定価格などの入札に関する情報を入手したり、
荏原が受注することへの賛成を取り付けたりする工作を担っていたという。
詳細な情報を得るために、地元議員ら自治体に影響力のある有力者を接待したり、謝礼を渡したりすることもあり、
そのための費用に、架空外注費を計上して捻出(ねんしゅつ)した裏金を充てていた。
不正な活動や工作費に裏金を使っていることは、荏原側も黙認していたという。
OM社は03年、税務調査を受け、01年12月期までの3年間で約9億円の所得隠しを指摘された。
うち4億円は使途を明らかにしなかったため「使途秘匿金」と認定され、重加算税を含め約6億円を追徴された。
OM社の社長(67)は04年、荏原の旧経営陣に対し、「裏金は荏原の受注工作に使った」と主張。
これを受け、荏原はOM社に6億円の支払いを約束し、06年まで5回に分けて計3億2000万円を支払った。
OM社はこれを納税に充てたとみられるが、荏原は内部告発を機に、その後の支払いを中止した。
荏原は今年4月に経営陣を刷新した際、OM社への販売手数料は不正支出だったと認めた。
OM社への支払いは元副社長(69)が独断で部下に指示したもので、元副社長には数千万円を
着服した疑いもあるとして、損害賠償請求訴訟も検討するという。
これに対し、元副社長は社内調査に「当時の経営トップも了承していた」と説明。
OM社への支払いは元副社長が退任した04年6月以降も続いていることから、不正支出は会社ぐるみで
行われていた可能性が高い。
読売新聞の取材に対し、OM社社長は「荏原に裏切られたが、何も話したくない」とし、
荏原製作所広報室は「詳細は調査中で、年内には発表したい」と話している。
(2007年12月3日3時1分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20071203it01.htm