今年で開港140年を迎えた神戸港が港則法施行令の一部改正に伴い、12月1日から
隣接する尼崎西宮芦屋港、大阪港と統合され、「阪神港」になる。統合により船舶に
かかる税金などの港湾コストが軽減。阪神大震災以降、地盤沈下が進む国際港としての
競争力回復へとつなげる効果が期待されている。しかし、「神戸港」が海図から消えることで、
観光への影響も懸念される。果たして統合はミナト神戸にとって吉と出るか凶と出るか?
■メリットは?
神戸市から大阪府泉大津市まで、大阪湾をぐるりと囲むように連なる神戸港、尼崎西宮
芦屋港、大阪港。しかし近接しているにもかかわらず、船舶はそれぞれに寄港するたび、
税や書類手続などの負担を強いられてきた。このため平成18年3月には産官学の関係者
から、港湾コストの低減などが提唱された経緯がある。
現在、3港のうち2港以上に寄港する外国貿易船は全体の約42%。外航コンテナ船では
約62%に上るが、阪神港開港による関税法施行令の改正で、税金納付は1回で済む
ようになる。このため、船舶関係総料金の約15%が低減。同様に東京、川崎、横浜の3港を
統合して誕生した京浜港の例にならい、入港船舶数の増加や国際競争力の強化が期待されている。
■「アジアに負けるな」
「お客さんに負担をかけ続けるようでは、神戸港の地位はどんどん下がってしまう」。平成7年の
阪神大震災以後、貿易関係者の間でそんな声がささやかれるようになったという。
震災でコンテナバースが被害を受けるなどした影響もあり、神戸港のコンテナ貨物取扱量は
前年の4218万トンからほぼ半分の2113万トンにまで激減。その後、輸出入貿易額は
平成16年に7兆1068億円とようやく震災前の水準にまで回復したが、その間に韓国や中国など
アジア諸国の港湾整備が進み、かつてコンテナ取扱量で世界一を誇った神戸港の中継拠点
としての役割が失われてきているという。
神戸商工会議所広報企画室長の津田佳久さんは「港湾コストでアジア諸国との競争に負けてきた。
入港数の急激な増加などプラス効果はすぐには出ないだろうが、まずはあるべきスタートラインに
立った」と話す。
■神戸の港は神戸港
しかし、統合により「神戸港」の名称は海図から姿を消し、港則法上は「阪神港神戸区」となる。
世界に開かれた港町のイメージを“売り”にしてきた、観光への影響はどうなるのだろうか。
日本クルーズ客船(大阪市北区)営業企画課の栗田徹夫さん(50)は「アテネやローマ、
オーストラリアのパースなど、知名度が高いが実際に船が着く港は別の名称という観光地は
世界的にも多い。『阪神港』になったからといって知名度への影響は少ない。パンフレットなど
から神戸の名前がなくなるということはないでしょう」と話す。
神戸港の港湾管理者である神戸市は平成18年に中突堤(中央区)の旅客ターミナルを
リニューアルオープンするなど、客船の誘致に力を入れてきた。その成果が現れ、ここ数年は
順調に客船の入港数が増加しており、「たとえ港湾の世界で名前が変わっても、神戸の港は
神戸港」としている。
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/071130/plc0711301207013-n1.htm