来年3月末で廃線となる兵庫県三木市の第三セクター「三木鉄道」に、全国の三セク鉄道会社から
「車両を譲って」という要請が相次いでいる。
85年の国鉄分割・民営化によって三セクに移行した地方鉄道の多くは、気動車が約20年の耐用年数にさしかかり、
更新時期を迎えているからだ。
三木鉄道が所有する3両の気動車は比較的新しく、経営難で新車に手が出ない各三セク鉄道にとって、
またとない好機という。
三木鉄道は98〜02年、富士重工業製のディーゼル気動車3両の新車を、それぞれ約1億円で購入した。
隣接する同県加古川市とを結ぶ約6.6キロの単線を、1両編成(定員116人)で運行している。
車幅などの規格について、全国の三セクはほぼ共通しており、中古車だと数千万円程度での購入が見込めるため、
現在7社から問い合わせが寄せられている。
樽見鉄道(岐阜県)は、三木鉄道廃止の報に接し、すぐに社員を現地に派遣して車両を確認した。
所有する6両のうち3両は昭和期の製造。
経営難で沿線5市町から徹底した経営努力を求められており、「三木鉄道の車両はのどから手が出るほどほしい」という。
三木市の隣の小野市と加西市の間約13.6キロを走る北条鉄道。
3両の気動車のうち1両が84年製で、老朽化のため週1日しか使えない。
三木鉄道とはともに旧国鉄加古川線(現・JR加古川線)の支線だった縁がある。
こちらも「ぜひ譲ってほしい」。
担当者は「車両購入は加西、小野両市からの補助金頼り。今の経営状態では、とても『新車を』とは言えない」と打ち明ける。
信楽高原鉄道(滋賀県)はいったん購入を希望したが、三木鉄道の気動車では大幅改良をしないと急斜面が運行できないと
わかり、保留中という。
「めったにない出物なんですが……」と担当者は残念がる。
85年に三セク鉄道として再スタートを切った三木鉄道は、利用者減の影響で10年ほど、毎年約6千万円の赤字が続き、
全額補填(ほてん)していた三木市の財政再建のため、廃止が決まった。
三木市は、3両のうち1両を記念に保存し、残り2両をオークション方式で売却する方針。
車両の「第二の人生」に熱い視線が送られていることについて、三木鉄道の斎藤浩・鉄道部長は
「整備が行き届いていると他社からほめられるのは鉄道マンの誇り。
ただ、この技術ももうすぐ必要なくなる」と寂しそうだ。
朝日新聞
http://www.asahi.com/national/update/1120/OSK200711200061.html