江刺「東北油化」 巡回、臭気測定奥州市が対策
奥州市江刺区内で、家畜の死体の焼却処分や内臓などの再生加工を行っている処理場から発生する悪臭に対し、
周辺住民がいらだちを募らせている。
処理場は市の中心市街地にも近く、街のイメージも損ないかねないとして、市も巡回しての監視や臭気測定の
強化など対策に乗り出した。
畜産業を支える不可欠な施設ではあるが、北東北にはわずかに3施設しかなく、そのために処理が集中し、
さらに悪臭と苦情を招く事態となっている。
悪臭が問題となっているのは、同区稲瀬の「東北油化」(武内勝治社長)の処理場。
牛の死体を焼却したり、食肉加工の過程で不要になった豚の内臓や骨を飼料に再生加工したりしている。
こうした施設は「化製場」と言われる。近くには観光施設の歴史公園「えさし藤原の郷(さと)」や、
市が誘致に力を入れる工業団地もある。
同社は1976年に北上市から移転して操業を開始。
悪臭に対する苦情は、操業当初からあり、78年には周辺住民らが当時の江刺市に陳情し、対策を求めた。
悪臭はその後も続き、江刺市は93年に悪臭公害防止条例を施行し、臭気の基準値を超えるごとに改善を勧告してきた。
悪臭は一時、沈静化していたが、昨年夏から再び表面化し、今夏も市に多数の苦情が寄せられた。
市が調べたところ、家畜の内臓などを保管する倉庫のシャッターが開けっ放しになっていたり、
機械の故障で処理が滞った原材料を野積みにしたりしていたことが原因とわかった。
「においがひどい時には洗濯物も干せない。原材料を狙って集まってくるカラスに田んぼを踏み荒らされることもある」。
施設から500メートルほど離れた所に住む「稲瀬八幡自治会」の青木伸会長(58)は怒りを隠さない。
「いつまでたっても解決しないのは、行政の怠慢も原因」と市にも批判の矛先を向ける。
東北油化の武内社長は「においはどうしても出てしまう。
不愉快な思いをさせて申し訳ない。今後は従業員に衛生管理の意識を徹底させたい」と釈明する。
県などによると、北東北3県では、大規模な化製場は、同社のほか、青森県八戸市と花巻市に1か所ずつあるだけ。
ただ、花巻市の化製場は、廃棄物を敷地内に違法に埋めたとして行政処分を受け、
06年3月から死亡牛の処理が禁止されている。
県内では年間3000頭を超える死亡牛が発生し、その6割が八戸市に運ばれ、残りを東北油化が処理している。
06年以前は、花巻市の化製場が処理していた分がほぼ東北油化に回ってきているという。
「畜産業界を支えている重要な施設」(市の担当者)なだけに、業務停止命令のような強硬手段はとりにくい
ことも背景にある。
それでも、市は今年9月、住民と保健所職員らを交えた連絡会議を開き、当面の対策として、巡回指導による監視の
徹底化を図ることや、臭気測定回数を増やすことなどを確認した。
12月にも連絡会議を開き、同社の対応を検証する。
現在のところ、故障した機械は修理を終え、野積みされている原材料はないが、住民からは「悪臭の度合いは変わらない。
このままでは、移設を求める運動も考える必要がある」との声もあがっている。
(2007年11月20日 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/iwate/news005.htm