http://sankei.jp.msn.com/economy/finance/071112/fnc0711122225014-n1.htm 【ワシントン=渡辺浩生】
低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)の大量焦げ付きに伴う巨額評価損が
露見し、引責辞任した米銀最大手シティグループのプリンス前会長兼最高責任者(CEO)と
米証券大手メリルリンチのオニール前会長兼CEO。2人が受け取った計2億ドル
(約220億円相当)もの退職金に厳しい批判の声が挙がっている。
10月30日に辞任したメリルのオニール前会長の退職金は自社株購入権など
株式報酬や年金など計1億6150万ドル(約177億6500万円)相当。
今月4日に辞任したシティのプリンス前会長も株式報酬や株価連動ボーナスなどで
約4200万ドル(約46億2000万円)相当だ。さらにオニール氏は今後3年、
プリンス氏は同5年、専用の執務室や秘書、車が提供されるというから驚く。
批判はやっかみではない。2人の経営の失敗は明白だからだ。
サブプライムローンを組み込んだ債券価値の暴落で損失が膨らみ、
メリルは7〜9月期に50億ドルと発表した評価損を84億ドルへと大幅下方修正。
シティも同期に約65億ドルの評価損を計上したが、10月以降に最大110億ドルもの
追加評価損が発生すると発表した。
両氏は決算発表でサブプライム危機の影響を楽観視していたため、投資家を混乱に
陥れた。両社の株価は今年30%以上も下洛。一部株主は、サブプライム関連投資で
「虚偽または誤解を与える発表をした」と集団訴訟を準備。ウォール街の金融機関全体に
「どれだけ損失が膨らむか分からない」(米銀アナリスト)と不信の連鎖を招いた。
弁護士のウィリアム・レラチ氏は11日付米紙ワシントン・ポストに投稿し
「株主に損失を負わせる愚かな意思決定をする一方、自分のポケットの皮算用をする
ウォール街のCEOの説明責任はどうなっているのか?」とかみついた。
小売り大手ホーム・デポのナーデリ前CEOは昨年、業績悪化で辞めても約2億ドルの
退職金を受け取るなどかねて高額退職金は問題視され、ブッシュ大統領も
「CEOの報酬は業績向上に基づいて決められるべきだ」と苦言を呈した。
日本の大手銀行トップの場合、「退職金は数億円に達することもある」(金融関係者)。
ただ、みずほグループを創設した旧日本興業銀行の西村正雄元頭取(故人)や、
三井住友銀行の西川善文元頭取(現日本郵政社長)は、不良債権問題で公的資金を
受け入れたため、退職慰労金の受け取りを一時辞退している。
CEOの破格退職金が、米企業経営者のモラル失墜を印象づけたのはまちがいなさそうだ。