「待ちわびた友戻ったよう」
2007年11月10日
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故・栗山武男さんの日章旗を大津市職員(左端)から受け取る、栗山さんの
大津商業学校の同窓生たち=大津市におの浜4丁目のホテルで
【旧日本兵の日章旗仲間の元へ「帰還」】
【元米兵親族から大津商同窓生に】
太平洋戦争の激戦地、フィリピン・レイテ島で戦死したとされる旧日本兵の
栗山武男さんの日章旗がこのほど、保管していた元米兵の親族から出身地の
大津市に返された。同市は栗山さんに遺族がいないことから、9日、日章旗に
寄せ書きをしていた大津商業学校(現・大津商業高校)の同窓生に、この遺品を
託した。同窓生たちは半世紀を超えて「里帰り」した仲間の形見を見ながら、
募る思い出を語り合っていた。
同市によると、歴史学者で米国カリフォルニア大学教授の長谷川毅さんが、
映画「硫黄島からの手紙」について話をした米国人の友人から、「父親の遺品に
日の丸の旗があり、身内に返したい」と相談を受けた。日章旗には「大津商業学校
端艇班(ボート部)」「贈 栗山武男君」と書かれていた。長谷川さんは今年9月に
同市に経緯を説明した手紙を送り、同市が大津商に確認したところ、名簿に
栗山さんの名前を見つけたという。日章旗は栗山さんが1944年に出征する際、
ボート部の仲間や恩師たち計17人が寄せ書きをしたものだとわかった。
9日、栗山さんと同じ大津商の42年卒業生の同窓会が大津市内のホテルで
開かれ、同市の担当者から同窓生ら12人に日章旗が手渡された。
出席した津田賢哉さん(82)=大阪府枚方市=は、寄せ書きに自分の名前を
見つけて「懐かしいな」とポツリ。44年秋、福井・敦賀の連隊に所属していた
栗山さんから「出征前に大津市に戻る」との連絡を受けて再会した。その後、
母校で先生や後輩と共に日章旗に寄せ書きをした。
「無事にけがすることなく戻ってこい」。そんな願いを込めて、同市内の駅で
出征する栗山さんの姿を見送ったが、その後、栗山さんからの音信は途絶えた
という。「自分の名前が入った日章旗とともに、待ちわびた友が戻ってきたようで感慨深い」
日章旗は大津商の校内にある同窓会の史料館に寄贈された今後、館内で
展示される予定だ。同窓会の栢木進会長(51)は「若者が犠牲になった戦争の
悲惨さや平和の尊さを、同じ世代の在校生に感じてもらうために授業などで活用してもらいたい」と話している。
http://mytown.asahi.com/shiga/news.php?k_id=26000000711100003