ワシントン発10月15日=ジョン・ボスニッチ]ロシア空軍が戦略爆撃機を動員して
大規模な軍事演習をまた実施する。期間は10月16日から向こう半月。太平洋、
大西洋、北極圏、黒海の4方面。事実上、地球規模。ロシア空軍が公式発表した。
それによると今回の演習に参加するのはロシア空軍の第一線に所属する超音速
戦略爆撃機トゥポレフTu-160『ブラックジャック』、遷音速戦略爆撃機トゥポレフ
Tu-95『ベア』。超音速戦域爆撃機トゥポレフTu-22M3『バックファイヤー』。基地往復の
長距離飛行を支援するためイリューシンIL78『マイダス』空中給油機も加わる。
演習とはいえ規模が大きいためロシア空軍参謀長、アレクサンドル・ゼ―リン空軍大将が
全体を指揮統率する力の入れよう。演習では有事即応にあわせロシア領内北部、南部の
訓練空域内目標に爆撃、巡航ミサイル発射を行う。プーチン大統領が旧ソ連時代並みの
戦略爆撃機の日常パトロール飛行再開を8月下旬に命じてから、この種の露空軍の演習が
平行して頻繁に続いている。英国、ノルウェイ、カナダ、米等の防空識別圏にロシア空軍
戦略爆撃機が一段と接近飛行しており、関係国の戦闘機がスクランブル発進に追われている。
今回の演習の背景にロシア側の言及はないが、ミサイル防衛網での米ロ交渉の対立、
核開発に絡む対イラン制裁措置の不協和音、WTO参加交渉での譲歩引き出し等プーチン
政権の力の外交戦略が絡んでいる可能性も推測される。『ロシア空軍は国際法に従い
領空侵犯にならぬようパイロットが最新の注意を払っている』(米空軍高官)が不測の
事態に発展する懸念は少なくない。同時にスクランブル出動に掛かる経費は航空
燃料の暴騰で各国空軍の台所を直撃。ロシアもそろそろ行動を控えて欲しいという
のが欧米の偽らざる心境のようだ。
http://www.aviationnews.jp/2007/10/post_61ca.html