雪印食品(解散)による牛肉偽装事件を2002年に内部告発した西宮冷蔵(兵庫県西宮市)の
休業から再建までを追ったドキュメンタリー映画「ハダカの城」が今月27日から、東京・中野で
上映される。
映像作家の柴田誠さん(38)が約1年半にわたって同社の水谷洋一社長(54)に密着し、
奮闘ぶりを追った作品。柴田さんは、「正義を貫くことの大切さ、困難さを知ってほしい」と
訴えている。
映像は、休業から約1年後の03年冬、JR大阪駅前の歩道橋で水谷社長がたたずむ
シーンから始まる。「まけへんで!!西宮冷蔵」と書かれたのぼりの下、再建に向けた
カンパを呼びかけている。2人が初めて出会った場所だ。
西宮冷蔵は事件後、取引先に敬遠されて売り上げが急減した。02年11月に休業に追い
込まれ、社員約20人を全員解雇。廃業も考えたが、「このまま辞めたら、『西宮冷蔵の二の
舞いになるのは嫌だ』と、内部告発する勇気を持つ人がいなくなる」と、再建を決意し、座り
込みをしていた。
その心意気に感動した柴田さんが取材を申し込み、撮影がスタート。水谷社長が支援者に
頭を下げる姿や、空っぽの倉庫にたたずむ横顔、真っ暗闇の事務所で告発に至る経緯を
語るシーンなど、約80時間分の映像を108分に編集した。タイトルは、裸一貫で出直す
姿からつけたという。
同社は、カンパを元手に04年4月に営業を再開。映画はその1年後、倉庫での荷降ろし
作業の風景で終わっている。現在、同社は休業前の約7割まで業績が回復したが、
牛肉の取り扱いはない。
北海道の牛ミンチ偽装事件や、不二家のずさんな品質管理など、その後も、食の安全を
巡る不祥事が相次いでいる。柴田さんは、「『おれみたいな男がいつまでも注目されとるのは、
今の日本が狂うとるからやろな』と、水谷さんが自嘲(じちょう)気味に話したのが一番印象に
残っている」と話す。
上映は、中野区東中野4のポレポレ東中野で、今月27日〜11月9日の午前10時40分
から。入場は一般1500円。
http://www.yomiuri.co.jp/national/culture/news/20071009i4w9.htm?from=main4