厚生労働省所管の独立行政法人「雇用・能力開発機構」(横浜市中区)が運営し、職業訓練指導員を養成している
「職業能力開発総合大学校」(神奈川県相模原市)の卒業生のうち9割以上が指導員とは関係ない職に就いていることが
会計検査院の調べで分かった。同校の運営には66億円(06年度)が国費から支出されており、検査院は「財政負担の
効果が十分に発現されていない」として規模や業務の見直しの必要性を指摘した。
指導員は、職業能力開発促進センターなど同機構や都道府県の職業能力開発施設で、機械や建築の技能や技術の
指導を担当。同大学校では4年間の長期課程を卒業すると学士の資格と指導員の免許を取得できるほか、大学院に
相当する研究課程(2年間)でより高度な技術を学べる。長期課程は200人以上、研究課程は数十人が毎年卒業している。
ところが卒業生の進路を調べたところ、01年度は長期課程の35%、研究課程の85%が職業訓練指導員や指導関連
の仕事に就職したが、その後年々減少。06年度は長期課程は9%、研究課程は5%に過ぎなかった。01年度は同機構
が長期課程卒業生の3割を採用したが、機構が特殊法人から独立行政法人化した04年以降、業務の縮小や効率化で
民間の外部講師を活用したり、実習の外部委託を進め卒業生の1割以下しか採用していないためとみられる。指導員に
ならなかった卒業生は進学したり民間企業に就職しているという。
また、公共職業安定所で紹介された就職に伴い転居が必要な勤労者のために同機構が全国1530カ所に計約14万戸分を
設置している「雇用促進住宅」を巡っては、06年度に新規入居した約1万4000世帯の約8割が、就職とは全く無関係な
理由で入居していたことも判明した。
同機構は同大学校について「需要予測等を基に養成定員の削減などを検討している」とし、同住宅について
「低所得勤労者のためにも対象を拡大しているが、今後15年間で譲渡、廃止されることがすでに決まっている」とコメントした。
【斎藤良太】
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070929k0000m040134000c.html 毎日新聞 2007年9月28日 22時46分