火星にも地球同様、氷河期があったらしい。しかし、氷河期が終わった現在でも、
氷は予想以上に広い範囲で残っている。最新の研究によれば、地球にはない
火星の自転の「ふらつき」が気候変動を劇的にしているようだ。このことは2008年に
火星の北極に着陸するNASAの火星探査機「フェニックス」で検証できるかもしれない。
地球における氷河期の存在が判明したのは19世紀ごろだが、この数年における
探査機の活躍で、火星にも氷河期があるとわかってきた。しかし、火星では北極や
南極からだいぶ離れたところにも氷が残っていて、地球からの類推では説明でき
なかった。ハワイ大学の天文学者Norbert Sch?rghofer氏は、火星の氷河期について
新たな仮説を提唱した。鍵を握るのは、自転の「ふらつき」である。
火星の緯度に応じた、予想される地下における氷の分布。
http://www.astroarts.jp/news/2007/09/21martian_ice/surface.jpg 地球の自転軸は、地球の公転面に対して23度ほど傾いている。一方、火星の自転
軸の傾きは25度。両惑星の類似点として引き合いに出されることがある数値だが、
これは現在偶然一致しているにすぎない。地球では月が回転を安定させる役割を
果たし、自転軸はコマのように首振り運動はしても、傾きの角度は変わらない。しかし、
大きな衛星を持たない火星の場合は最大で10度も変化するのだ。
前回火星で大規模な氷河期が発生したのは、300〜500万年前のこととされている。
このときは広い範囲で雪が降り、氷の層が両極を中心に大きく広がった。その後、
氷の大部分は蒸発してしまい、前線は後退していく。
さて、火星の自転軸が大きく傾くと気温が変化し、湿度が高くなる。これによって、
氷河期のように雪が降るまでには至らないが、大気中の水分が土壌のすき間に
入り込んで凍りつく。こうして出来た「凍土層」が氷河期時代の氷の層に重なり、
自転軸が変化しなかった場合に比べ、緯度が低いところでも氷が残ることになるのだ。
過去数百万年における火星地下の氷の移り変わり。地軸の変動に伴い火星では
乾いた気候と湿った気候が繰り返す。
http://www.astroarts.jp/news/2007/09/21martian_ice/timeline.jpg ところで、先月打ち上げられたばかりの火星探査機「フェニックス」は、2008年5月に
氷河期時代の氷が残る限界付近に着陸する予定だ。フェニックスは長い腕で地面を
掘ることができる。Sch?rghofer氏は、土砂の下から凍土層と氷の層が両方見つかる
ことを期待している。
ソース AstroArts
http://www.astroarts.co.jp/news/2007/09/21martian_ice/index-j.shtml