北朝鮮から中国への核実験の事前通告はわずか20分前――。
中国共産党や中国外務省の現役官僚とされる匿名の中国人グループが、北朝鮮を
批判する内部報告書をまとめた。朝鮮戦争以来、「血の同盟」で結ばれてきた
中朝関係が揺らいでいる実態が記されている。
この報告書は中国国内で公表できず、近く日本で翻訳出版される。
報告書は、対北朝鮮外交の窓口にあたる中国共産党中央対外連絡部アジア局や
外務省アジア局、中国軍事科学院などの現役官僚5人が昨秋から執筆したといい、
北朝鮮による麻薬取引や偽札などの国家的犯罪、金正日(キム・ジョンイル)
政権が崩壊しない理由など計約300ページに及ぶ。
報告書によると、06年10月の北朝鮮の核実験の際、北京の北朝鮮大使館は実験
の約2時間前、本国から「30分前に中国へ知らせろ」と指示を受けた。
しかし、大使がさらに10分遅らせて連絡。中国への通告は実験の20分前だった
という。
突然の通告を受けた中国外務省から、胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席や温家宝
(ウェン・チアパオ)首相への報告は核実験の直後になり、中国側はメンツを
つぶされた格好。
報告書は「(北)朝鮮という狂った戦車のために中国の外交戦略と国際的地位が
台なしにされるのも耐えられない」と北朝鮮を激しく批判している。
また、報告書には、50年代から中国による北朝鮮経済援助額は「約8000億
人民元(12兆8000億円)を上回る」など極秘情報も記されている。
報告書はジャーナリストの富坂聡氏が入手。富坂氏によると、著者グループは
中国の大手出版社に持ち込んだが、断られたため、富坂氏の仲介で「対北朝鮮・
中国機密ファイル」(文芸春秋)として出版されることになった。
富坂氏は「出版後の当局の対応から、今の中国の北朝鮮外交や言論の自由度を
推し量ることができる」と語る。韓国側資料が多数含まれているとみられ、
専門家からは、中国の学者やジャーナリストの関与の可能性を指摘する声も
ある。
北朝鮮問題に詳しい重村智計・早大教授は「中国の北朝鮮への対応が率直に
まとめられた初めての本だろう。新事実がいくつか含まれ、中国国内で
北朝鮮に振り回されることへの強い反発が伝わってくる」と話す。
ニュースソース:
http://www.asahi.com/international/update/0911/TKY200709110244.html