ロシアが大規模なインフラ整備に乗り出している日本の北方領土で、労賃の安い
北朝鮮人労働者が雇用されていることが確認された。北方領土にはこのところ
外国人労働者の流入が活発化しており、プーチン政権が労働力不足の穴を外国人
労働者によって埋め、北方領土の実効支配を強める姿勢が鮮明になりつつある。
北方領土の消息筋によると、国後島と択捉島の建設現場や水産加工場などで外国人
労働者が雇用されており、国後島の建設現場では北朝鮮出身の労働者十数人が確認
された。ほかにキルギスやタジキスタンといった中央アジア諸国など旧ソ連圏や
中国からの労働者が目立つという。
人口減少に悩むロシアでは毎年、連邦政府が各地方の要望する外国人労働者の数や
雇用分野をとりまとめ、「外国人受け入れ枠」として各地方に割り振っている。
北方領土に流入しているのも、この制度に基づいて受け入れられた“合法労働者”
だ。外国人労働者はロシアの極東全域で増加しており、北方領土では「外国人
労働者の働きぶりは良い。労働力が不足しているため、地元行政府も外国人の
雇用を歓迎している」(消息筋)と受け止められている。
特に、北方領土を事実上管轄するサハリン州は北朝鮮との間で労働者受け入れに
関する個別協定を締結しており、2005年には約1200人の北朝鮮労働者を
受け入れた。
日露関係筋によると、同州と北朝鮮の対外経済当局は一昨年10月と昨年12月に
協力協定を締結。昨年12月の協定文書には「相互利益のある商業・経済協力を
すべての方向性において継続する」とうたわれ、森林伐採や農業、建設、水産の
各分野で関係を拡大し、労働者の受け入れを増やすことで合意している。
専門家の推計によると、北朝鮮はロシアや東欧、中東・アフリカ諸国に1万〜1万
5000人の労働者を“輸出”している。北朝鮮当局は労働者の賃金を“ピンハネ”
していると指摘されており、組織的な外貨獲得手段となっている疑いが濃厚だ。
ロシアはソ連時代、北方領土を含む極東など辺境地域や戦略的要地の住民に給与や
年金を割り増しする「植民政策」で広大な版図を維持。しかし91年のソ連崩壊後
は、財政難からこうした辺境の開発に手が回らず、北方領土を含む極東部は激しい
人口流出と産業衰退に見舞われた。
これに対し、石油価格高騰に潤うプーチン政権は昨年8月、北方領土を含む千島
列島(クリール諸島)の開発を目的とした2015年までの「クリール諸島社会
経済発展計画」を採択。この地域に220億ルーブル(約975億円)にのぼる
巨額の資金を投入し、再び北方領土の掌握を強める意欲を見せている。
同様の長期開発計画はエリツィン前政権期の1994年にも策定されていたものの、
財政支出は計画規模の平均18%にとどまっていた。それが昨年は1年間で17億
7200万ルーブルとそれまでの10年間に匹敵する巨額が投じられており、
雲行きは変わりつつある。
サハリン州の消息筋は「新発展計画への財政支出は完全に達成されるだろう。
ソ連崩壊後に減少した人口は回復しておらず、今後も外国人労働者の受け入れが
進むのは間違いない」と指摘している。
ニュースソース:産経新聞
http://www.sankei.co.jp/kokusai/world/070908/wld070908011.htm