■おにぎりや水を大量入荷、仮設トイレに自家発電機
電気やガス、水道とともに、今やわが国の「もう一つのライフライン」ともいえるコンビニエンスストア。
新潟県中越沖地震では、過去の震災の教訓を生かし、迅速に対応したコンビニの姿が目立った。
平成16年10月の中越地震、今年3月の能登半島地震でも現地取材を担当した目で
今回の被災地を見ると、その存在が年々大きくなっていることがわかる。(徳光一輝)
≪普段通り営業≫
地震発生から約7時間後の16日午後5時すぎ、震度6強に見舞われた柏崎市中心部へ入り、
避難所の小学校を回った。市内へ入る前に買ったチョコレートや柿の種をかじって
空腹をしのいでいたら、市内のコンビニは軒並み営業していた。
ただ、「セブン−イレブン」の一軒に入ると、弁当やおにぎりはすべて売り切れ。
飲み物の棚も、ビールや缶入りチューハイといった酒類以外は空っぽで、
水やお茶などは即座に売り切れたらしい。
それでも、スナック菓子やチョコレートなどは普段通りにあり、男性副店長は
「弁当などの商品も通常の1時間半遅れで届きました。道路の混雑以外は、
それほどの影響はなかったと思う」。
2日目以降は本部から特別物資としておにぎりや水の「送り込み」があったといい、
その夜に再び訪れると棚いっぱいに弁当とおにぎりが置いてあった。ただ、
おにぎりの種類は梅とツナ、明太子くらいと少なかった。
3年前の中越地震では停電でレジが動かず、
店先に「屋外売り場」を設けたセブン−イレブンもあったが、
今回はほぼ通常通り営業。被災者は食料品だけでなく、
携帯電話の充電池なども群がるようにして買っていた。
≪他県から回す≫
今回は、大手だけでなく地元のコンビニも対応が早かった。新潟県内に121店ある
「セーブオン」(前橋市)の経営企画部長、羽鳥豊さん(34)は「3年前の教訓が生きた」。
中越地震では、断水のため店のトイレが使えず仮設トイレを手配したが
「くみ取りまで頭が回らず困った」。今回はそれも手配した上、
停電した柏崎市内の3店には自家発電機を持ち込んだ。
また、新潟の弁当工場が被災したため他県の工場から品物を回し、
輸送についても先遣隊が道路状況を伝えるなどしてスムーズに運んだという。
一方、能登半島地震で震度6強だった石川県輪島市門前町の場合は、
過疎地域でコンビニそのものがほとんどなかった。被災者向けには
支援物資のおにぎりが配布され、避難所で炊き出しが行われたが、
食料不足の感は否めなかった。
わが国に初めてコンビニができて三十数年。全国の総数は約4万3000店と
世界一のコンビニ大国となった。ふだん何げなく食べている弁当やおにぎりが、
もしも姿を消したら…。「もう一つのライフライン」であることが、被災地で身に染みた。
≪貯水タンク≫
地震2日目の17日夜、柏崎市内で車を走らせていたら、見慣れたファミリーレストラン
「バーミヤン」のネオンを見つけた。店内では何組かが食事をしている。
この日夕から再開したという。店から出てきた男性客2人は
「やってるよ。すごいよ」と弾んだ声で話した。
3年前、最大の被害に見舞われた小千谷市で飲食店が再開したのは発生から10日目。
水道もガスも復旧しないままカセットコンロで肉を焼き始めた焼き肉店だった。
柏崎のバーミヤンは、貯水タンクに水が1・5日分残っており、
隣接する長岡市の系列店からも水を運んだ。本部によると、万一に備え、
全国の大半の店で貯水タンクを持っているという。
コンビニ同様、夜間でもこうこうとともる明かりを見ると、本当にほっとする。
心身ともに疲労が重なる被災地ではなおさらだ。
メニューはチャーハン(スープなし)と焼きギョーザのみ。皿はプラスチック。
店先に置かれたワープロ打ちの紙には、こう書かれていた。
「震災のためご迷惑をかけながらも何とか営業にこぎ着けることができました。
本日は2品しか準備できませんが、ごゆっくりお過ごし下さい」
7月20日20時33分配信 産経新聞
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070720-00000925-san-soci