東京・JR大崎駅西口の再開発計画に伴う土地売却をめぐり、重電メーカー
「明電舎」(東京都中央区)が税金の減免措置を期限内に申請しなかったた
め、東京国税局から約80億円の申告漏れを指摘されていたことがわかった。
追徴税額は過少申告加算税を含めて約28億円に上り、同社はすでに全額
を納付している。単純ミスが多大な税負担を招いた格好で、同社は
「勉強不足だった」と反省しきりだ。
この土地は、JR大崎駅西口にある明電舎の工場跡地。同社はこの土地を
1913年(大正2年)ごろに取得し、約15年前までは発電機などを生産
する工場を稼働させていた。
付近一帯が2002年に再開発地区として都市計画決定されたことを受けて
、同社は新しい本社とテナントが入る30階建て(地下2階)のオフィスビル
「シンクパークタワー」の建設を計画、土地の一部を売却して建設費を捻出
(ねんしゅつ)することにした。
しかし、大正時代に取得した土地を売却すれば膨大な利益が出て、税負担も
重くなる。このため、同社では、土地の売却益をビルの建設費に充てた場合、
税金が減免される租税特別措置法の圧縮記帳という税制上の優遇措置を受ける
ことを決めた。この措置によって、一定期間にわたって経費計上が認められる
減価償却額は少なくなるものの、一度に過大な税負担が生じるのを避けられる。
同社は05年3月、工場跡地約1万9000平方メートルの半分をビルの
共同開発主に売却して約80億円を工面したが、この際、優遇措置が適用され
ると見込み、売却で得た利益を申告しなかった。
ところが、東京国税局の税務調査の結果、同社が優遇措置の適用を受ける
ために税務署に申請したのは、期限となる05年5月を1年も過ぎた06年
5月だったことが判明。このため、同国税局では適用を認めず、工場跡地の
売却益を申告しなかったとして、06年3月期に申告漏れを指摘、追徴課税
(更正処分)した。
節税するつもりが、逆に多大な税負担を招いたことに、明電舎広報室は
「(申請の遅れは)担当者の認識不足によるミスが原因。指摘は真摯
(しんし)に受け止めたい」と話している。
税法に詳しい浦野広明・立正大教授は「似たケースはまれにあるが、
税務上の優遇措置を受けるのに、申請の期限や条件があるのは当然。
単純ミスの代償としてはあまりに重いが、今後の教訓となるだろう」と
指摘している。
(2007年7月9日14時31分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070709it05.htm