中国残留孤児訴訟の原告・弁護団、支援策の収入調査を拒否
中国残留孤児の新たな支援策について、与党プロジェクトチーム(座長=野田毅元自治相)と交渉を続けている
中国残留孤児訴訟の全国原告団と弁護団は1日、代表者会議を開き、生活保護と同様、収入を調査する
「収入認定」の手続きが残る限り、支援策に同意しないという方針を決めた。
支援策についてはこれまで、基礎年金の満額(月約6万6000円)を支給し、生活保護に代わる特別給付金も
支給するという座長試案が示されていた。生活保護の場合は年金を収入と見なして給付額から差し引くが、
座長試案では一部を収入とは見なさない特例を設けた。野田座長はさらに、年金の全額を収入と見なさない
ことで、総額14万6000円を保証する修正案を6月末に示したが、依然として収入認定の手続きは残るため、
孤児らの理解を得られなかった。
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なぜ、孤児らはこれほどまでに「生活保護方式」を拒むのか。
兵庫原告団代表の初田三雄さん(64)は受給資格がありながら、生活保護を拒否している。帰国後14年間、
清掃作業員などとして働き、受け取る年金は月5万円。これだけでは生活できないため、夫婦で朝5時から
5時間ほどアルミ缶拾いをして1日3750円を稼ぐ。
それでも生活保護を受給しないのは、「様々な制約があるから」。生活保護には、厚生年金やアルバイト料
などを収入から差し引く「収入認定」があり、貯金も生活必需品の購入目的などを除けば原則許されない。
同世帯に収入のある人がいれば資格がなくなるため、子供との同居をあきらめるケースもある。
初田さんは、妻のために加入した生命保険を解約したくない。収入認定で、厚生年金分が差し引かれるのも
耐え難い。「厚生年金は懸命に働いてきた証し。それをなかったことにするのは、私の人生を否定するのと
同じ。一生懸命働いた結果がこんな老後だったと思うと惨めです」と訴える。
野田座長の修正案は、生活保護より約6万6000円も多いが、収入認定を伴うほか、貯金の制限など
生活保護同様の制約がついている。孤児らは、「いくら金額が増えても、自由と尊厳が認められなければ
意味がない」として、生活保護方式では断固拒否するとの姿勢を貫く方針だ。
国に損害賠償を求めた集団訴訟で孤児側敗訴の判決が相次ぐ中、安倍首相の“鶴の一声”で検討が決まった
新支援策。与党内でも、公明党は孤児に同調し始めた。全国原告団代表の池田澄江さん(62)は「(今年1月に)
安倍首相は、日本に帰って良かったと思えるようにすると約束してくれた。その言葉を信じます」と希望を
つないでいる。
(2007年7月2日3時3分 読売新聞・岩永直子)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070702i401.htm?from=main4