夏場のヒートアイランド対策の「特効薬」となるか――。
高圧で霧状にした水を噴霧する「ミスト散布」で街角を冷やしたり、建物の外壁に
ゴーヤやヘチマなどのつる植物を育てて室温を下げたりするモデル事業や実験が、
大阪でスタートした。「日本一暑い」とも言われる大阪の夏を過ごしやすくしようと、
大阪市や府が普及に力を入れている。
「冷たくて気持ちいい!」。大阪市北区で3日に開かれた市水道局のイベント。テント
の三方から霧が噴き出す「ミスト体験コーナー」で、家族連れが歓声を上げた。
午後2時過ぎにスタッフがテントの外の気温を測ると23.2度。テント内は6度以上
も低い16.7度だった。自営業の男性(59)は「大阪の夏は昼間に営業に回ると
バテてしまう。こんなスポットが街にあれば、少しは仕事もやりやすい」と感心して
いた。
ミスト散布は、水道水に通常の10倍以上の圧力を加え、小さな穴のあいたノズル
から直径数十マイクロメートル(1マイクロメートルは1000分の1ミリ)の水粒子を
噴射。気化する際に、周囲の熱を奪う性質を利用して気温を下げる。粒子は細かく、
触れてもぬれないという。
市が昨夏に実施した大阪大との合同実験では、配水場の屋外の1700平方メートル
の敷地にノズル約400個で散布。その結果、最大9度、平均で3度の冷却効果が
あったという。
市はミスト散布のモデル事業を、18日から9月中旬まで、ミナミの心斎橋筋商店街
(中央区)やJRユニバーサルシティ駅(此花区)などで段階的に実施。8月開幕の
世界陸上大阪大会の会場となる長居陸上競技場(東住吉区)のマラソンや競歩の
コースでも、100〜200マイクロメートルと大きめの水粒子を散布し、選手らの過度
の体温上昇を抑える。
ノズル200個で10時間噴霧した場合の水量は2.4トンで、水道料金は200円程度。
現在は、水道使用量が増えるほど基本料金も割高になるため、市は導入促進をにらみ、
ミスト専用メーターの設置を検討する。
一方、つる植物で建物に「緑のカーテン」をつくる実験は、大阪府が5月から府内の
6市7カ所で始めた。安価で手軽に外壁を覆う手法として、成長の早い1年生の植物に
目を付けた。
府は昨春、敷地面積千平方メートル以上の建物を新築・増改築する際に敷地面積の
10〜15%程度を緑化するよう条例で義務付けた。屋上や壁面を緑化するビルも増え
始めたが、散水設備などで、1平方メートルあたりの費用が数万円かかる難点がある。
一方、ゴーヤなどで緑化した場合は、園芸用の苗や土、プランター、ネットなどを使う
ため、費用は1平方メートルあたり約920円で済むと試算する。
府は枚方、堺、茨木、四條畷、大東、八尾の計6市の小学校や幼稚園、事業所などに
頼んで、ゴーヤ、きゅうり、ヘチマ、朝顔、サツマイモなどを育てる実験を行う。
昨年、庁舎にヘチマの「カーテン」を垂らした東京都板橋区では、日なたより12〜13度
ほど気温が下がる効果を確認。同様の取り組みを始めた枚方市では、市立樟葉幼稚園
の遊戯室の窓や壁をゴーヤが覆った。前川なをみ園長は「涼しげだし、子どもたちは実が
なって大喜びでした」と話す。
府は植える時期や水やりの方法を変えて約30パターンの育て方を試し、年内に結果を
ネットで公表して普及を図る。
http://www.asahi.com/life/update/0611/images/OSK200706110034.jpg http://www.asahi.com/life/update/0611/images/OSK200706110039.jpg ■朝日新聞 2007年06月11日17時21分
http://www.asahi.com/life/update/0611/OSK200706110033.html