青森県むつ市の呉服店が、架空とみられる購入契約を顧客に無断で結び、信販会社から
顧客に支払い請求が行くケースが相次いでいる。被害者は少なくとも、数十人にのぼると
みられている。なかには知らない間に、1人で1千万円を超える着物や帯を購入したことに
なっていた人もいた。商品の代金は契約成立時に信販会社が立て替える形で呉服店に
支払っており、むつ署は詐欺の疑いがあるとみて捜査している。
この呉服店は自宅を兼ねているが、シャッターがおりたままになっている。身に覚えが
ない請求が来た客が契約内容を確かめようと、3月中ごろに店を訪ねたところ、50代の
経営者夫婦はすでにいなくなっていた。県消費生活センターには、同店との購入契約に
ついて、3月から現在まで23件の相談が寄せられている。「名前を勝手に使われ、品物
を買ってもいないのに、クレジット会社から請求が来た」との相談がほとんどで、センター
では、勝手に名義を使われた人はさらに多数に上るとみている。
市内の女性(55)は4月初め、「銀行口座から引き落としできないので入金してほしい」と
いう連絡を信販会社から受けた。契約内容を確認すると、着物と帯の2点を計72万円で
購入したことになっていた。この女性は自分では購入した覚えがなく、品物も受け取って
いない。代金の引き落とし先の銀行口座も、自分の口座とは違う番号だった。信販会社
には事情を説明し、支払いを停止させた。この女性の元には4月以降、信販会社4社か
ら、購入した覚えがない請求書類14通が次々と送られてきた。購入したとされる着物や
帯の総額は1174万円。いずれも、支払いを停止している。
大手信販会社は「調査中であり、現時点でどの程度の被害があるのかはっきりしない。
全容がはっきりした時点で、対応を決めたい。契約したことがないというお客には誠心
誠意対応したい」と話している。県消費生活センターは、「契約した覚えがなければ、
抗弁書を信販会社に提出し、支払いを止めることもできる。ただ、事情を知っていて名
義を貸した場合は責任を問われることもある」と注意を促す。
むつ署は、詐欺の疑いがあるとみて、実質的な被害者である信販会社などから事情を
聴いているが、経営者夫婦の所在は確認できていない。
ソース:朝日新聞
http://mytown.asahi.com/aomori/news.php?k_id=02000000705240004