国民年金保険料徴収、不在扱い69万人…納付率かさ上げか
社会保険庁が住所不明などを理由に国民年金保険料の徴収対象者から除外している「居
所未登録者(不在者)」が約69万人(2006年度末)に上ることが7日、わかった。
不在者をめぐっては、過去に、納付率をかさ上げするために勝手に不在者登録された事例
が10万人以上確認されている。同庁は、69万人の中に実際には住居が確認できる人もい
るとみて、住居確認などを含め全件調査に乗り出した。年内にも、調査結果を公表する方針だ。
同庁によると、不在者としての登録は、本来、住民票が確認できない場合に行うとしていた。
具体的には、〈1〉引っ越しの際、転出届を出してから3か月以上転入届を出していない
〈2〉居住が確認できず、市町村の判断で住民票が削除された――などのケースだ。
ただ、過去には、住民票があっても、「郵便物が『あて先不明』で返送されてきた」などの理
由だけで、不在者登録される例が少なくなかった。同庁がさらに悪質なケースと見ているの
が、保険料の長期滞納者らを勝手に不在者登録する例だ。
不在者は納付率の計算の際に分母となる徴収対象者から除外される。このため、長期滞
納者を不在者扱いにすれば、分母が少なくなるため納付率がアップする。
同庁から納付率アップを指示されている地方の社会保険事務所の多くが過去にこの手法
を使っていたと見られ、05年度に新たに不在者登録された約33万9000人のうち10万4777人
に不正処理が見つかった。このため同庁は、不在者の全件調査を行うこととした。同庁は、
「69万人については、なぜ不在者登録されたかの記録は残っていない。69万人のうち、現
在は不在者ではなくなっている人を適正に処理することが調査の主な目的だ」としている。
不在者扱いされると、保険料の督促対象からも外れる。保険料を支払わなかった場合、年
金が支給されないか減額される。
同庁によると、国民年金の加入者は2190万人(05年度末)。納付率は65〜70%程度と、
目標の80%には達していない。仮に69万人全員が不在者ではなかった場合、納付率はさ
らに2、3%程度下がる計算だ。
政府は今国会に、同庁を廃止・解体し、非公務員型の「日本年金機構」へと衣替えする社
保庁改革関連法案を提出している。衣替えを前に、不在者問題など「負の遺産」を清算する
ことが不可欠と判断したもので、同庁は与党議員らに全件調査などついて説明した。
(2007年5月8日3時3分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070508i201.htm