いったん断っても、再び常習してしまう覚せい剤依存症には、特定の遺伝子が
関係していることが分かった。マウスを使った名城大学(名古屋市)などの
研究チームの成果で、治療薬開発の手がかりになりそうだ。
名城大の鍋島俊隆教授とヤン・イージン名古屋大特任助手らは、赤ランプが点灯した時に
その下にある穴を鼻先でつつくと、少量の覚せい剤がもらえる仕組みのマウス飼育箱を作製。
普通のマウスと、GDNFという神経栄養因子を作る遺伝子を働かなくしたマウスをそれぞれ
この中で飼い、常に覚せい剤を求め続ける依存症になるまでの日数を比べた。
すると普通のマウスは平均20日かかったが、GDNF遺伝子が働かないマウスは平均15日。
覚せい剤が出ない状態を3カ月保った後、再び赤ランプをつけると、普通のマウスの倍のペースで
穴を激しくつつき続けた。GDNFがないと覚せい剤依存症の発症・再発がしやすくなることが示された。
これと並行して、丹羽美苗(にわ・みなえ)・名城大研究員はGDNFを増やすことが
分かっているアミノ酸分子を使い、治療効果を調べた。依存症にしたマウスに5日間、
覚せい剤を与えないでおく。この間にアミノ酸分子を1日1回注射したマウスは、
覚せい剤を再び与えても再発しなかった。一方、何もしなかったマウスはすぐに再発した。
GDNFの増加で「誘惑」に強い体質になったと見ている。
鍋島教授は「結果がそのまま人間に当てはまるかどうかは分からないが、
治療薬開発の手がかりになる」といい、今後、複数の大学病院などと連携して、
覚せい剤依存症で治療中の患者の血液を使って、人でのGDNF遺伝子を調べる。
覚せい剤依存症を治す薬はなく、陥ると手を切るのが難しい。
厚生労働省のまとめによると、覚せい剤取締法違反で検挙された人のうち、
再犯者は00年の50%から増加し続け、05年には55%に達している。
ソース 朝日新聞 2007年05月03日12時04分
http://www.asahi.com/science/update/0502/OSK200705020074.html