厚生労働省と国土交通省は、大規模公団住宅などに高齢者が安心して住み続けられるよう、
福祉と住宅を一体化させた取り組みを始める方針を固めた。
空き店舗や空き住宅を、高齢者の生活に欠かせない医療・介護の場として活用するほか、
低層階への住民の住み替えも進める。
両省は、今年度中にモデル事業を始動させ、団塊の世代の高齢化で介護ニーズも高まるとされる
10年後を目標に、高齢者の街づくりを進めていきたい考えだ。
構想によると、団地にある空き店舗や空き住宅に、認知症高齢者向けグループホーム、
デイサービスや泊まり、訪問介護など様々なニーズに対応する小規模多機能型居宅介護
事業所などの介護施設を誘致。
また、訪問看護ステーションや、24時間対応の在宅療養支援診療所などにも入ってもらう。
高齢者向けのメニューを用意したレストランなど、暮らしに必要な事業を展開するよう、
NPO(非営利組織)などに呼びかける。
一方、住宅部分については、エレベーターは設置せず、バリアフリー化した低層階に住み替えてもらい、
住民が長く暮らせるようにする。緊急通報装置が備えられ、連絡を受けた提携タクシー会社から、
ヘルパー資格を持つ運転手が運転するタクシーが急行する。
対象としては、都市再生機構(旧日本住宅公団)が開発した大規模団地のうち、昭和40年代
(1965〜74年)に造成された約32万戸分を想定し、多摩、千里ニュータウンなどが含まれる。
両省は、その後、他の公営住宅にも拡大し、ニュータウンのない中規模都市でも、地域の事情に
応じた政策を展開する方針だ。
事業所を誘致する際には、当面、グループホーム開設に1500万円を交付する制度など、
両省にある既存の補助金を活用する。このほか、新たに補助金制度を作り、08年度予算に
費用を計上することも検討している。
政府は、増え続ける医療・介護給付費を抑制するため、費用がかかる特別養護老人ホームなどではなく、
高齢者が長く在宅で生活できるような体制づくりを進めている。今回の取り組みもその一環で、
大多数を占める中間所得層の老後の安心を確保したい考えだ。
(2007年4月20日3時1分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20070420it01.htm?from=top