1973年に行方不明になった渡辺秀子さん(当時32歳)の子ども2人が拉致されたと
される事件にからみ、渡辺さんの夫が勤務していた東京都品川区の貿易会社「ユニバー
ストレイディング」の当時の社員が、74年8月の韓国・朴正煕(パク・チョンヒ)大統領狙撃
事件の後、北朝鮮本国からの指示として「あんな事件を起こせ」などと命じられていた
ことが、警察当局の調べでわかった。
この社員は、日本人を多数、北朝鮮に送り込むようにという指示も受けていたという。
警察当局は、同社が韓国に対するテロなどを画策していたのではないかとみている。
同社は78年ごろに活動を停止したが、警察当局がその後、活動停止前の社員などを
調べた結果、社員の一人が、北朝鮮の工作機関からの指示として、「日本人と在日
朝鮮人の間に生まれ、日本国籍を持つ若者らを集めて、北朝鮮に送り込め」と命じられ
ていたことがわかった。
命じたのは同社の役員をしていた女(59)とみられ、指示の時期は、韓国の朴大統領が
狙撃された直後の74年後半から75年ごろだったという。命令を受けていた社員は当時、
「あんな事件を起こせ」とも指示され、その後、知人に「(仲間とともに)30人ほどを北朝鮮に
拉致した」と明かしていた。
朴大統領の狙撃事件の実行犯は、日本人名義の旅券で韓国に密入国した在日韓国人の
男で、韓国の公判記録などによると、狙撃を指示したのは、当時の在日本朝鮮人総連合会
(朝鮮総連)幹部だった。また、実行犯は、この時の旅券を、朝鮮総連を介して受け取っていた
ことも判明している。
北朝鮮はこの時期、韓国国内での工作活動を進めやすいように、日本国籍を持つ人物や
在日韓国人を工作員に引き入れる動きを活発化させており、警察当局では、ユニバース
トレイディングも、工作員の獲得や養成の拠点になっていた可能性が高いとみている。
(2007年4月7日3時21分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20070407i301.htm?from=main3