【プラハ=石黒穣】
日本とチェコ両国の政府は、京都議定書で規定する温室効果ガスの国際排出権取引制度を
用い、チェコが排出枠の余剰分を日本に売却することについて基本合意した。
双方の政府筋が6日、本紙に明らかにした。
近く取引の枠組みを定めた覚書を締結する。旧ソ連圏や東欧諸国で近年の経済活動低迷に
より生じた余剰排出枠を日本政府が買い付けるのは初めて。日本はチェコを足掛かりに、
ロシアやウクライナなどとの取引にも踏み出したい考えだ。
本紙が入手した覚書草案には、「日本はチェコで、温室効果ガス削減もしくは他の面でも環境に
役立つ事業に貢献する」と明記され、チェコは売却益を再生エネルギー推進など環境事業に使い、
日本も協力する。事業内容や売却価格は、改めて指針を策定する。
チェコでは共産党政権崩壊後に重工業が衰退し、京都議定書約束期間である2008〜12年に
二酸化炭素換算で年間3500万トンの余剰枠がある。このうち最大2000万トンを売却したい意向だ。
日本が京都議定書の目標「1990年比で温室効果ガスを6%削減」を順守するには、現状より
毎年1億7500万トン削減しなくてはならない。国内対策だけでは削減は難しく、チェコの余剰分
全部を取得できれば、必要な削減量の10%以上をまかなえる計算だ。
旧ソ連・東欧圏では、議定書の約束期間に年間計7億トン以上の余剰枠が発生する見込みで、
その大半をロシアとウクライナで占める。
この余剰枠は「ホットエア」とも呼ばれ、環境団体は排出権取引が、買い手国の国内対策を怠らせる
ことにつながると批判している。日本政府はこれまで、相手国が売却益を環境対策に使う「グリーン
投資スキーム」により余剰枠を購入するとしてきた。
(2007年4月7日3時9分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20070407i101.htm?from=main1