米Symantecは「Internet Security Threat Report(インターネット脅威レポート)」の
2006年下半期版を19日(現地時間)に公開した。
同レポートは、以下を含む情報源を基に作成されているという。
・180カ国以上に設置された4万センサー
・20カ国以上に用意された200万個の囮メールアドレス
・2万件以上の登録のある脆弱性データベース
同レポートには上記の情報源から得た多彩なデータが含まれているのだが、
本稿は主要3点に絞って解説したい。
■1. アンダーグラウンド経済における売買品目が明らかになった
昨近、マルウェア作成の動機が金銭目的化していることについて、
各種報道で度々紹介されているが、同レポートはさらに
「アンダーグラウンド経済の一端を担っているサーバ」で売買されている品目を明らかにしている。
ここで取引されている主要な品目は、やはり、クレジットカード番号、電子メールアドレス、
Paypalアカウントといったデータだったとされ、加えて、Yahoo! MailのCookieを盗み出す攻撃コードや、
支配下にあるコンピュータ、フィッシングを行うサイトなども売買の対象となっているという。
ただし、このサーバに関するBBSやフォーラム、あるいはIRCなどといった
取引形式の具体的なところについては、記載がなかった。
表:「アンダーグラウンド経済の一端を担っているサーバ」で売買されている品目
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/03/21/symantec/images/001l.jpg ■2. ボットネットの統合・拡大化
同レポートはボット感染PCの数が1日平均で約63,000台観測されたと報告している。
特に、MS06-040のServerサービスの脆弱性や、MS06-055のIEのVMLの脆弱性がボットに組み込まれ、
活発に利用された昨年9月頃に感染の拡大がみられたとしている。
一方、ボットにコマンドを指示するCommand and Control(以下C&C)サーバの数は、
2006年上半期の約6,300台から約4,700台へと減少したとする。
同レポートではこの現象について、ボットネットの統合・拡大化が行われたため、と指摘している。
グラフ:2006年のボット感染PCの観測数
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/03/21/symantec/images/002l.jpg ■3. 新たに発生したマルウェアの亜種数はStrationがトップ、感染経路が「不明」なものが上位5種を占める
同レポートでは、2006年の下半期に新たに発生したマルウェアの亜種数はStrationがトップであるとしている。
Strationはメールの添付ファイルを感染経路とし、感染動作として様々な機能をダウンロードしてくる、
いわゆる「ダウンローダ」。Strationの亜種は2006年下半期に150種以上登場したという。
一方、感染経路が「不明」とされているものがトップ10に5種もランク入りしているという異様さがある。
その内訳として、オンラインゲームのアカウントパスワードを盗み出すGamepassが2位、
スパムメールの中継をするHorstが5位、その他金銭目的とおぼしき感染動作をするマルウェアがある。
残念ながら、感染経路が不明な理由についての記載はない。
この点だけに依拠すべきではないだろうが、最新のマルウェアの実態動向は
さらに混迷の一途をたどっているようだ。
表:2006年下半期に新たに発生したマルウェアの亜種数トップ10
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/03/21/symantec/images/003l.jpg MYCOMジャーナル
http://journal.mycom.co.jp/articles/2007/03/21/symantec/