◇住民登録訴訟:公園テント「住所でない」原告、逆転敗訴
大阪市北区の公園でテント生活をしているホームレスの男性が同区長に、公園を住所とする転居届の
不受理処分の取り消しを求めた訴訟の控訴審判決が23日、大阪高裁であった。田中壮太裁判長は
「男性は公園で継続的に日常生活を営んでいるが、健全な社会通念に基礎付けられた住所としての
定型性を備えていない」として、公園での住民登録を認めた1審・大阪地裁判決を取り消し、原告側逆転敗訴
の判決を言い渡した。
判決によると、原告の山内勇志さん(56)は98〜99年ごろ、扇町公園で暮らし始め、00年ごろから
はテントを設置して生活している。01年2月、同区内の支援者宅に住民登録をしたところ、警察に
違法性を指摘され、市側からは職権で住民登録を抹消すると通知された。
このため04年、同公園に住民票を移す転居届を同区役所に提出。区役所側は「公園の適正な利用を
妨げる」として受理せず、市長に対する不服審査請求も棄却された。
訴訟では(1)実際に住んでいれば公園でも法律上の住所になるか(2)公共性や周辺への影響を
理由に転居届を拒否する権限が自治体側にあるか−−が最大の争点になった。
判決はまず、住所について「選挙権、納税義務、福祉政策の資格の有無に関る基本的要素。
単に一定の場所で日常生活が営まれているだけでは足りず、その形態が健全な社会通念に基礎付け
られた住所としての定型性を具備していることが必要だ」との解釈を示した。そして「市町村長は住所の
実体がないときは、転居届を受理しないことになる」として、自治体側の柔軟な権限を認めた。
そのうえで「原告のテントは簡易な構造で、容易に撤去、移転され得るもので、いまだ土地に定着して
いない。独立の電気設備などもない。都市公園法上も設置は違法で、社会通念にもそぐわない」と指摘。
「生活の本拠としての実体があるとは認められない」として、大阪市側の不受理処分を適法と結論付けた。
1審判決は「占有権限の有無とは無関係に、生活の本拠たる実体を備えており、転居届の不受理は
許されない」と判断していた。【前田幹夫】
▽関淳一市長の話 主張が認められ、妥当な判決。公園は公共施設で、そこに住所を設定することは
社会通念からも認められない。
◇住民登録 住民基本台帳法に基づく制度。市区町村が住民個人と世帯の居住地や居住関係を
住民票に登録することで、その居住地が住所となる。住民票を基に住民基本台帳が作成され、住所の
公証や選挙人名簿の登録など行政の事務処理の基礎となっている。住民票の記載事項は氏名、
生年月日、性別、世帯主と続き柄など。
毎日新聞
http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20070123k0000e040026000c.html