◆マグロ保全、日本が主導へ 世界5機関、神戸で初の会合
世界の5つのマグロ資源管理機関が一堂に会し、減少が目立つマグロの資源保護策を
話し合う初の合同会合が22日、神戸市の神戸国際会議場で始まった。
規制を無視して違法操業をしている漁船の情報共有化など、
各管理機関の具体的な連携強化策に、どこまで合意できるかが焦点となる。
会合の冒頭、白須敏朗水産庁長官が「会議のゴールは各管理機関の枠組みを超え、
持続的なマグロ漁業が可能であることを内外に広く示すことだ」とあいさつ。
国連食糧農業機関(FAO)の担当者が、世界のマグロ資源状況について、
特に東部太平洋と地中海のクロマグロや、ミナミマグロ、太平洋のメバチマグロなどが
過剰漁獲になっていると指摘。
「このままだと資源は壊滅的な状況になり、漁獲は減少することになる」と懸念を表明した。
また、船籍や所有者を頻繁に変えながら規制を逃れるといった違法な漁業が横行し、
適切な資源管理を困難にしている状況も紹介された。
会合には、各管理機関に加盟する計77の国・地域のメンバーが出席。
FAOや国際漁業団体の「責任あるまぐろ漁業推進機構」(東京)、
非政府組織(NGO)の世界自然保護基金(WWF)なども参加した。
■漁獲量急増、利害を調整
世界一のマグロ漁業国であり消費国でもある日本が、5つの国際機関すべてに
加盟する立場を生かし、合同会合の開催を2年前に提案した。
中国や欧米でも“魚食”がブームとなり、許容量を上回る漁獲に歯止めをかけないと、
将来マグロが食べられなくなる恐れがあるからだ。
水産庁によると、世界で漁獲されるマグロは年間約400万トン以上にのぼり、
10年前に比べ約100万トン増加。
日本は、約60万トンで首位を占めているものの減少傾向にあり、
代わってインドネシア、フィリピンなどの新興国が追い上げている。
背景には、昭和52年に200カイリ(約370キロ)以内の水産資源を独占できる
「排他的経済水域」(EEZ)が設定されて日本の漁場が縮小したことや、
新興国が日本にならって、マグロの鮮度を保つ大型冷凍船を相次ぎ導入したことがある。
その結果、マグロ漁船の隻数は急増しており、資源を減らさず持続的に
漁業ができる水準に比べ、2〜3割過剰とされる。さらに技術力の向上で
1隻当たりの漁獲能力も高まっているという。
昨年には全海域のミナミマグロと大西洋・地中海のクロマグロの漁獲量を
今後3〜4年間で2割削減することが2つの国際機関で相次ぎ合意された。
刺し身用となるクロマグロやメバチマグロなどの大型魚の捕獲に適した「はえ縄漁」と
缶詰用に加工されるキハダマグロやカツオを狙う「巻き網漁」の対立。
漁業先進国と新興国の対立。横行する違法操業漁船の存在…とさまざまなレベルで
各国の利害や思惑が交錯し、なかなか足並みはそろわない。
資源保護に向けて、かつて世界のマグロの6割を漁獲していた日本が、
各国の利害をいかに調整し、原産地証明の義務付けといった具体策をどこまで打ち出せるのか。
22日から始まった会合で採択する行動計画で、日本は主導権を握り、
すべてのマグロの原産地証明や、違法操業漁船の情報共有などの対策を盛り込みたい考え。
「数値目標までは踏み込めないかもしれないが、マグロ資源に対する国際協調の第一歩にしたい」
(水産庁)としており、参加77カ国・地域をまとめあげる強力なリーダーシップが発揮できるかが焦点となる。
(小野木康雄)
産経新聞 2007/01/22 16:54
http://www.sankei.co.jp/seikatsu/shoku/070122/shk070122003.htm ※続きます。