07年に予定されている児童虐待防止法改正について、各党を代表して協議している
超党派の勉強会が、親権の前提として「子どもを養育する責任」があるとする
「親責任」の考え方を、改正案に盛り込むことで大筋一致した。
民法の親権規定が、虐待されている子どもへの対応を遅らせるケースがあることに配慮。
親権に対する新たな概念を導入することで、家裁の親権喪失宣告や親権代行者を立てる
保全処分、児童相談所による立ち入り調査をしやすくする。(平元英治)
協議しているのは「児童虐待防止法見直し勉強会」(幹事・馳浩自民党衆院議員)で、
それぞれ党内手続きを経たうえで、25日召集の通常国会に議員立法で提出する。
同法は00年成立し、04年に一部が改正された。この際、公的機関による子どもへのケアを
容易にするため、虐待を行う親の親権を「一時停止および一部停止」する制度の導入が
議論されたが、民法がネックとなり実現しなかった。
民法は「成年に達しない子は父母の親権に服する」(818条)と規定している。
親権の一時・一部停止を実現するには民法改正が必要だが、改正の際は法制審議会
(法相の諮問機関)で数年かけて審議するのが通例で、04年の児童虐待防止法改正では
「3年後をめどに見直す」と議論を先送りした。現在も民法見直しの動きはない。
親責任は、こうした状況を受け浮上した。
89年に英国が児童法に取り入れた「親が責任を果たしている限り、子どもに対して権利を有する」
との法概念で、状況に応じた親権の制限を目的としている。
勉強会は日本でも民法の範囲内での対応が可能と判断、厚生労働省の雇用均等・児童家庭局も
「児童虐待防止法に盛り込まれれば、数年かかる親権喪失宣告や最短でも1週間前後かかる
保全処分が早く行われる」と期待を示している。
例えば、児童相談所が家裁に保全処分を申し立てた場合、家裁は親から事情を聴く「審尋」を
経たうえで判断するのが通例。
勉強会メンバーによると、親責任を導入すれば、緊急措置の保全処分は審尋なしで認容される
可能性が高く、事態への対応をより迅速に行えるようになるという。
一方、児童虐待への警察関与について、自民党は「親責任をテコに、住居への強制立ち入りなど
関与のルール作りを進めるべきだ」と主張しているが、野党は「憲法が定める捜査の令状主義を
侵す恐れがある」と難色を示しており、引き続き協議する。
全国の児童相談所での児童虐待に関する相談件数は90年度には1101件だったが、
以後年々増加。05年度には90年度の31倍に当たる3万4472件に達している。
毎日新聞 2007年1月9日3時00分
http://www.mainichi-msn.co.jp/seiji/gyousei/news/20070109k0000m010112000c.html