「いくらもらってんだ」の悪態に一発レッドカード
●毅然たる態度で何度も粘り強く
06年ドイツW杯開幕日のポーランド―エクアドル戦。
フィールドに立ち、ラインをまたぐ時に緊張をほぐそうとして、パートナーの廣嶋副審に声を掛けた。
「廣嶋さ〜ん、幸せですか?」
すかさず返事が来た。
「幸せや〜」
鹿児島高専時代にユース日本代表に選ばれ、日本リーグのフジタ(現湘南)でもプレーした。
しかし、両ヒザのケガもあって91年にクビを言い渡された。気持ちを切り替え、審判に転身した。
「早くトップレベルで笛を吹きたい」。その一心で経験を積みながら、96年にはJリーグ主審、
国際審判、そして02年日韓W杯審判と駆け足でトップに上り詰めていった。
15年の審判生活で、審判に必要不可欠なものは何かを実感した。それは「やる気」「勇気」
「根気」「平常心」という。
《毅然たる態度で同じことを粘り強く続ける。公平に見るために自分自身をコントロールし、淡々と
判定を下す。ゲームコントロールは、選手との信頼関係が深いほどやりやすい。その基礎は
“変わらない基準”が作る》(著書「平常心」ランダムハウス講談社から)
95年、Jリーグのサテライト(若手主体の育成試合)でこんな経験をした。ある選手が
「今日のレフェリー、いくらもらってんだ」と聞こえよがしに言った。すぐにレッドカードを出した。
すると、コーチの怒鳴り声が聞こえてきた。「おまえ! 上川だから(暴言を)言うなって言っただろ!」――。
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