近未来通信、見せぬ経営実態…決算公告1度もなし
投資家から資金を募ってIP電話事業を行う「近未来通信」(東京都中央区)が、
旧商法(現会社法)で義務づけられた決算の公告を全く行っていないことが分かった。
同社は、電話事業が実態を伴っていない恐れがあると読売新聞が報道した後になって、
事業の「共同事業者」と位置づける投資家にも決算書の一部を閲覧できるようにしたが、
具体的な記述に乏しくコピーもできない。企業財務に詳しい公認会計士は「この決算書では、
実際に電話事業が行われているのか投資家に分からない」と指摘している。
旧商法では、株式会社の決算は、定時株主総会で承認を受け、貸借対照表かその要旨を
公告する義務がある。公告を怠ったり不正な公告をしたりすれば、100万円以下の
過料となる。
近未来通信は、法人登記簿で公告を「官報に掲載する」としているが、
官報に公告されたことはない。また、ホームページで売上高の推移は紹介しているが、
資産や負債の状況は一切明らかにしていない。
今年8月末、同社の電話事業には実態が乏しく、投資家への配当の大半は別の
投資家から集めた資金が充てられていることを読売新聞が報じると、投資家から、
経営状況を示す貸借対照表や損益計算書の公表を求める声が相次いだ。
このため、同社は9月、2005年7月期の貸借対照表と損益計算書を本社と
各支店に配布したが、希望する投資家に閲覧を認めるだけで、コピーは渡していない。
しかも、この決算書では、保有する預金などを示す「流動資産」、借入金を示す「流動
負債」、本来の事業に伴う「営業利益」などについて、それぞれの総額は記してあるが、
内訳は明かしていない。
元大手監査法人の公認会計士は、「資産と負債の内訳が分からず、この決算書では
何をやっているか分からない」と指摘。別の会計士も「投資家が共同事業者なら、
その資金でどれだけ売り上げがあるのか明示しなければならない。
極めて不親切な決算書だ」と批判している。
同社代理人の弁護士は、「閲覧で、情報開示の責任は必要最小限度、足りている。
(開示方法とその内容は)当社は不都合と考えていない」としている。
(2006年11月14日3時5分 読売新聞)
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20061114ic01.htm