2006年10月28日(土)
3年前の中学生自殺「息子の死 真相知りたい」
「いじめでは」両親苦悩、再発防ぐ手だて求める
2003年10月、山梨県内の中学校に通っていた一人の少年=当時
(13)=が自宅で自らの命を絶った。突然の死だった。遺書はなく、残され
た40代の父親と母親は学校から「直前に友達からの『からかい』はあった
が、自殺の理由は分からない」と説明を受けた。「いじめではないのか」と教
育委員会にも真相をただしたが、回答は同じだった。「なぜ、息子は死ななけ
ればならなかったのか」と自問自答を繰り返す両親。愛息を失った喪失感とと
もに、その思いは募るばかりだ。
家族によると、少年は学校から帰宅後、自分の部屋で首をつって自殺した。
近所の人からの連絡を受け、病院に駆け付けた両親は、その日の朝いつものよ
うに「行ってきます」と出て行った息子の変わり果てた姿と対面した。
スポーツや学業にも熱心に取り組み、リーダー的な存在だったという少年。
テレビのお笑い番組が好きで、プロ野球のジャイアンツのことだったら何でも
知っていた。友達とのトラブルも隠さずに打ち明けてくれた。そんな息子が、
何も告げずに死を選んだ。「亡くなる前日も、当日だって変わったところは何
もなかった。理由が分からず、しばらくは混乱するだけの日々だった」。母親
は切々と語る。
死から約二週間後、両親は自殺の理由を知りたくて学校に足を運んだ。そこ
で学校側から自殺前の経緯をまとめた一枚の紙を渡され、死の直前に仲の良い
友達から性に関する話題でからかわれていたことを知った。
両親の「いじめはなかったのか」との問いに、学校と教育委員会は「からか
いはあったが、いじめは確認されなかった」と答えた。当時の校長は今も「学
校としては、からかいはあったが自殺の直接の引き金になったとは思っていな
い、としか言えない」との見解を示す。自殺の理由は「不明」とされている。
何が十三歳の少年を自殺に向かわせたのか。「私たちに言えなかったことが
学校生活であったのではないか」。今となってはそれが何かを知ることは難し
く、両親は今も「助けてあげられなかった」と自責の念に駆られるという。
昨年度、県教委が県内の公立小中高校で確認したいじめの件数は七十九件。
形態は「冷やかし・からかい」が五割以上を占めて最多。「学校側はからかい
があったと認めているのに、いじめはなかったと主張する。その矛盾が納得で
きない。本人が嫌だと思ったら、それは『からかい』ではなく『いじめ』
だ」。父親は、やり場のない怒りをにじませながら「学校は、それを十分に認
識して教育に取り組んでほしい」と訴える。
全国でいじめなどを理由に、子どもたちが命を絶つケースが相次いでいる。
「わが子を自殺という最悪の形で亡くす悲しみは、ほかの誰にも味わってほし
くない」。二十八日は少年の三回目の命日。両親はいま、その思いを強くして
いる。
山梨日日新聞
http://www.sannichi.co.jp/DAILY/news/2006/10/28/1.html