男性不妊:精子ミトコンドリア異常が原因に
精子のミトコンドリアに生じた突然変異が男性不妊の原因になることを、筑波大などの
研究チームがマウスの実験で世界で初めて明らかにした。ヒトの不妊男性の精子でも、
同様の突然変異が見つかっており、ミトコンドリアの異常がヒトの男性不妊の原因になっている
可能性が高まった。2日の米国科学アカデミー紀要電子版に発表した。
ミトコンドリアは細胞内で、生命活動に必要なエネルギーになる「ATP(アデノシン3リン酸)」
を作り出している。
研究チームは、ミトコンドリアに突然変異を持つオスのマウスを作った。このうち、
ミトコンドリアのゲノム(全遺伝情報)の変異率が高い(81%以上)マウスと健康なメスからは、子どもが1匹も生まれなかった。このマウスの精子の数は、健康なオスマウスの5%程度、
受精に必要な運動能力もなかった。分析の結果、ミトコンドリア変異マウスでは、ATP産生に
欠かせない酵素が作られなくなっていることを突き止めた。
研究チームの中田和人・筑波大助教授(細胞生物学)は、「ミトコンドリア変異マウスでは
ATPが作られず、エネルギー不足になって、精子を作る能力や精子の運動能力が落ちて、
不妊の原因になっているようだ。精子の運動能力を回復させる新薬の研究などに役立つだろう」と
話している。
毎日新聞【永山悦子】 2006年10月3日 7時13分
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20061003k0000e040003000c.html