骨粗しょう症の予防など、健康イメージで伸びてきた豆乳の売れ行きが鈍っている。今年に入って、
大豆イソフラボンの安全性論議がメディアをにぎわしたことがイメージの悪化につながったともいわれる。
大豆食品の健康効果を説く専門家は「若い世代にとっては、大豆食品の不足こそが問題なのに」と安全性
論議に惑わされないよう訴える。
◇注意対象、凝縮サプリだけなのに
大豆イソフラボンは女性ホルモンのような働きをする成分。大豆イソフラボンを凝縮したサプリメントを
女性が大量に摂取した場合、子宮内膜が厚くなるなどの研究報告から、厚生労働省は8月下旬、
食品安全委員会の答申を受けて「妊婦、授乳中の女性、乳幼児、小児は、大豆イソフラボンを凝縮した
錠剤やカプセル、粉末などを摂取しないこと」などの指針を都道府県に通知した。
同省新開発食品保健対策室は「注意の対象はあくまで凝縮したサプリメントで、
豆乳や納豆などの大豆食品は栄養価に富み、従来通り、食べることを勧めている」と強調する。
◇少なくない大豆自体への誤解
しかし、日本豆乳協会(東京都)によると、豆乳の7割近くを占める調製豆乳の生産量は今年1〜3月、
前年同期比で約7%増だったが、4〜6月は約1%減少、伸び続けてきた傾向が逆転した。
調製豆乳を売る紀文フードケミファ(東京都)は「安全性論議が少なからず影響したかもしれない」と話す。
豆の加工食品メーカー、フジッコ(神戸市)が今年6月、首都圏と近畿圏の男女500人を対象に
大豆イソフラボンの意識調査を実施したところ、安全性論議が気になった人の約6割が「豆乳の購入を控えた」
と答えた。一方、約4割が「普通の大豆食品の取り過ぎにも注意した方がよい」と答え、大豆食品そのものが
危険と誤解している人が少なからずいる傾向がうかがわれた。
◇若者、摂取しないと骨粗しょう症の危険性
こうした状況に対し、世界各国を見て回り、大豆の効用を訴えてきた家森幸男・武庫川女子大国際健康開発
研究所長(予防栄養学)は「大豆食品からイソフラボンを取る国ほど心臓死、乳がん、前立腺がんが少ない」
と指摘大豆離れを心配する。
家森さんらが兵庫県内の女子大学生の大豆食品の摂取量を調べたところ、県民平均より4割も少なく、
3人に2人は週に1回も食べていなかった。「若い世代がもっと大豆食品を取らないと将来、骨粗しょう症など
が増える。妊婦や子どもにも大切な栄養源なのに、危険な食品という誤ったイメージが伝わっているとしたら、
深刻な問題だ」と改めて大豆食品の重要性を訴える。
危機感をもった豆乳メーカーなど10社は今月上旬、豆乳習慣普及委員会を設け、「豆乳の日」の10月12日から
11月末まで、全国のスーパーで試飲の機会を提供するキャンペーンを始める。同委員会委員長の料理研究家、
前川メグさんは「豆乳はビタミンB群が豊富で、鉄分は牛乳より多い。肌や腸の調子を整えるのにも最適」と
有用性を強調する。
毎日新聞 2006年9月22日 東京朝刊
http://www.mainichi-msn.co.jp/kurashi/kenko/news/20060922ddm013100129000c.html