県内のある民間児童養護施設で、男女職員二人がそれぞれ入所少年、少女と性的関係を
持ったり、職員八人が入所児童八人に暴力を振るっていた問題が発覚して三週間余。県内に
は、民間と公立計二十一カ所の児童養護施設があるが、二〇〇四年以来、三年連続で全体
の二割に当たる四カ所の施設で施設長や職員による虐待が明るみに出た。それでも、施設団
体の虐待への対応はまだまだ鈍い。
◆自主的総点検なし
県は今回の問題を、この施設長からの報告で六月二十七日に把握。立ち入り調査などを経
て七月二十七日、運営の社会福祉法人役員らの責任明確化や再発防止策などを求める改善
勧告を行った。
県内の児童福祉施設でつくる県児童養護・自立支援施設協議会(埼児協、丑久保恒行会長)
が問題を把握したのは八月十五日。さいたま市内で開いた緊急施設長会議で施設長が報告し
た。
丑久保会長はこの日、県を訪れ対応策を協議した。席上、県は「自主的に全施設を総点検す
る意向などはないか」と質問したが、同会長から明確な回答はなかったという。
埼玉新聞が十九日に報じたのを受け、上田清司知事は二十二日、全施設での「自己点検」
実施を要請する方針を示した。
県内の施設長の中には「自ら点検すべきではないのか」との声も出ていたが、埼児協は自主
的に実態を調査する姿勢は示さなかった。
◆発覚の大半が告発
県内児童養護施設で、これまで発覚した虐待は[1]〇四年七月=川越市の児童養護施設で
施設長と職員が虐待(〇四年七月、県が施設長解任を勧告)[2]同年十二月=児玉郡児玉町
(当時)で理事長兼施設長(〇五年一月、県勧告)[3]〇五年九月=大里郡江南町で施設長
(同年十二月に施設長解任勧告・命令)の三件。いずれも権利擁護機関への申し立てが契機と
なった。
埼児協は今月五日にようやく緊急施設長会議開催を通知した。丑久保会長は「あえて点検す
るより、施設長の自主性と良識で事前に一報をもらえると思っていたが、一件もなかった。倫理
綱領などを制定できればと思っている」と話している。
県は、近く開催される緊急施設長会議で約二十項目のチェックリストを提示、自己点検を要請
する。さいたま市も管轄二施設に同様の点検を求めることにしている。
ソース
http://www.saitama-np.co.jp/news09/11/14x.html