高専生殺害から1週間、容疑学生の行方つかめず 計画犯行説も
山口県周南市の徳山工業高専で中谷歩さん(20)が殺害されてから4日で1週間。殺人容疑で
指名手配された同級生の男子学生(19)の行方は依然分かっていない。周南署捜査本部の調べ
で計画性を疑わせる状況も判明したが、2人にトラブルがあったという情報はない。捜査本部は逃
走に使った青いミニバイクを手掛かりに150人態勢で捜索しているが、関係者の間には事件の衝
撃が広がっている。
これまでの調べで、捜査本部は犯行時刻は8月28日午前10時半〜11時との見方を強めている。
一方で、遺体発見は午後3時ごろ。研究室が施錠されていたことが発見を遅らせた一因だった。
男子学生の携帯電話は電源が切れているとみられ、端末から発信される電波で居場所を特定す
るのは不可能。これらは意図的なものとの疑いもあり、捜査本部は計画性の有無も慎重に調べる。
家族の証言では、男子学生の所持金は数千円程度。このため、捜査本部は近くに身を潜めている
可能性が高いとみているが、地理的要因から県外へ逃走した恐れもある。
学校からの道のうち、山道以外はいずれも大阪市と北九州市を結ぶ国道2号に続く。バイクは満タン
で200〜300キロ走行でき、東は岡山市、西は熊本市、北は松江市まで到達可能。途中にはセルフ
給油所も多い。
こうした中、捜査幹部からは「公共交通機関に乗り換えたのでは」との声も漏れ始めた。捜査本部は
JR徳山駅で防犯カメラの映像を入手したほか、徳山港のフェリー乗り場で不審者情報を聞き込み。
バイクが売却された場合を想定して販売店を回るなど、捜索範囲を拡大している。
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男子学生が事件にかかわったとしても、犯行動機は謎のままだ。捜査本部は学校関係者などから
話を聞いているが、2人の間にトラブルがあったかどうか把握できていない。
男子学生は12年前、周南市中心部から同市郊外にある現在の自宅に引っ越してきた。両親と中学
生の妹の4人暮らし。近所の友人によると、小中学生時代の成績は常に優秀で、ゲーム好きのグルー
プに入っていた。
小中学校で同級生だったという男性会社員(19)は「うそをつけない正直な性格で、悪いことをしても
自分から白状するようなタイプ。犯人だとは信じられない」と驚きを隠せない。
一方、同県上関町に住む男子学生の祖父は「孫のことが心配でたまらない。母親の所にも連絡がな
いようだ。もし帰ってきたら『よう帰ってきたな』と言ってやりたい。(歩さんと遺族には)申し訳ない気持ち
でいっぱい」と唇をかんだ。
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徳山高専では夏休み明けの1日から、専門家による学生らへの本格的なカウンセリングを開始。この
日は、2人が所属していた土木建築工学科約40人の半数が睡眠の不調を訴え、約10人は食事を十分
に取れていないことが分かった。
「事件が残した傷は思った以上に大きい。周囲がサポートする必要がある」と天野徹校長。4日から予
定していた前期末試験は1週間延期した。今後はカウンセラー約10人を常駐させ対応する。
衝撃は教職員にも広がる。「われわれの教育が間違っていたのかもしれない。どうしてこんなことに
なったのか」。2人を知る男性教授は苦渋の表情を浮かべた。
(09/04 01:13)
http://www.sankei.co.jp/news/060904/sha006.htm