きょう9月3日は「クエン酸の日」。単なる語呂合わせと侮るなかれ。蓄積した夏の疲れ
がどっと出やすいこの時期、注目すべき栄養素なのだ。果物の中で最も天然のクエン
酸を含むレモンにスポットを当てた。(榊聡美)
■活性酸素を消去
「夏バテの要因としてまず挙げられるのが活性酸素。レモンにはこれを消去する働き
があるんです」と話すのは、茨城キリスト教大学の板倉弘重教授(栄養学)。高い気温、
強い紫外線だけでなく、暑さによる寝不足やストレスでも体内に活性酸素が発生すると
いう。その結果、疲労感、内臓機能の低下などを招く。
レモンに含まれるクエン酸、ポリフェノール、ビタミンCなどには、活性酸素を消去する
働きがあり、夏バテの改善に役立つという。また、冷えや肩こりなど、いわゆる「冷房病」
の症状にもクエン酸が有効に働く。
「冷房病は末梢(まっしょう)の循環障害。クエン酸のほか、ポリフェノールにも血流を
よくする、一般的にいわれる“血液サラサラ効果”があります」(板倉教授)
かんきつ類や梅干し、黒酢などにもクエン酸は含まれているが、「レモンはポリフェノ
ールやビタミン、ミネラルなどとの相乗効果が見込める。また、さわやかな香りには癒
やし効果もあり、ストレスの多い現代人にこそ勧めたい食材」とアドバイスする。
■人気呼ぶ国産物》
昭和39年の輸入自由化以降、国産レモンは激減し、現在、国内で消費される9割
以上が輸入物だ。しかし近ごろ、国産需要が伸びつつあるという。
「健康ブームでここ2、3年、注文が増えています」。こう語るのは、千葉県南房総市
でレモンを栽培する尾形茂樹さん。レモンは年間を通じて気温の変化が少ない温暖な
気候を好み、国内では瀬戸内海地方を中心に栽培、南房総市はその北限といわれる。
収穫が始まるのは10月下旬。実が緑色のままハサミを入れる「青切りレモン」で、
輸入物より一回り大きい、120グラム以上になったものから次々と収穫し、作業は翌年
の4月ごろまで続く。
枝についた緑の実は、まだ小さくて硬かったが、鼻を近づけてみると、さわやかな香り
をしっかりと放っていた。
■新鮮さと安全性
南房総市内の(旧丸山町)宮下地区では約20年前、5軒の農家がミカンからレモンの
木に植え替え、栽培を始めた。尾形さんはこう振り返る。「作ったはいいけれど、どう
やって売ればいいか…。つい数年前まで頭を悩ませていました」
新鮮さと安全性。輸入物に比べ2倍近く値が張るものの、人気を呼んでいる理由は、
そこにあるという。
収穫後、日本の店頭に並ぶまでに2週間近くかかる輸入物に対し、その新鮮さは比較
にならないほど。続けてきた低農薬での栽培も、食の安全性にこだわる時流に乗った。
「採ってすぐのものは味も香りも違う。傷がついたものでいいからすぐ送ってほしい、と
いうお客さんもいますね」と、同地区の生産者、山田一洋さん。
これから旬を迎える国産レモン。栄養面もさることながら、フレッシュな香りと味わいを
楽しんでみてはいかがだろう。
【2006/09/03 東京朝刊から】
(09/03 22:20)
http://www.sankei.co.jp/news/060903/bun081.htm