2006年09月01日
水田に散布する農薬が原因とみられるミツバチの大量死が、昨夏に続いて発生した。
昨夏の大量死を受け、県養蜂組合は農協などと協議し、農薬散布の際、農家から
養蜂家に伝えてもらうことにしたが、水田近くの巣箱の多くが被害を受けた。多くの
農家が使う農薬は、人体に害は少ないが、ミツバチの大量死につながっているのが
実情だ。
県内では、養蜂家が巣箱約3300個(1箱2万匹程度)でミツバチを飼育している。
今年7月ごろから県央、県北部で大量死の報告が出始め、8月に入っても続いた。
全体の3分の1にあたる約1200箱が被害にあったとみられる。
昨年は県南部を中心に約700箱が被害にあった。カメムシ駆除のために水田に
散布された農薬が原因で、今年の原因も同じとみられている。
大量死が発生したのは、昨年から農薬の種類を変えたためだ。従来の有機リン系
農薬は、においを蜂が感じ取って近寄らないため、大量死はなかった。
しかし、有機リン系農薬は人体への影響が懸念されるとの指摘があり、いわて生活
協同組合が01年から一部の有機リン系の農薬の使用停止を生産者に求めている。
多くのコメ農家は昨年、自主的に農薬の切り替えを始めた。新しい農薬は、人畜
への影響は小さいとされるが、蜂や蚕への害は強い。昨年は、この農薬が大量死を
引き起こした原因とされた。
昨年の大量死を受けて対策も講じたはずだったが、効果はなかった。ある養蜂家
は「水田から3キロ以上巣箱を離したが被害が出た。5割近くの蜂が死んだ」という。
水田から遠く離れた山間部へ巣箱を移すと、「クマに蜂蜜を根こそぎ食べられて
しまう」(同)と頭を抱える。
県は「国が認めた現在の農薬の使用を禁止するわけにはいかない。まずは被害を
検証する」(農業普及技術課)という。
養蜂組合では「少量でも有機リン系のものを合わせて使えば、蜂も逃げられる」など
と提案する。ただ、他県でも群馬県が今年、有機リン系農薬の使用自粛を農業者に
求めるなど、農薬切り替えは全国的に進みつつある。
養蜂組合の藤原誠市組合長は「昨年は和解したが、今年は損害賠償訴訟も辞さない」
とするが、害虫駆除とミツバチ飼育を両立させる解決策は、まだ見つからない。
http://mytown.asahi.com/iwate/news.php?k_id=03000000609010001