FujiSankei Business i. 2006/9/1
英国で農薬などを使わない有機(オーガニック)食品市場が急拡大している。これに伴
い、スーパーチェーン大手が相次いで品ぞろえを大幅に拡充する計画を打ち出し、主
導権争いが激化している。有機食品は小売り世界最大手の米ウォルマートが重点事
業に掲げているが、英国でも小売業界の勢力図を左右する主戦場となりそうだ。
≪20億ポンド市場に≫
英最大の有機製品認証機関である英土壌協会によると、同国の2004年度(04年4月
〜05年3月)の有機食品市場は前年度比11%増の12億1300万ポンド(約2700億
円)に達した。今後10年で20億ポンド(約4460億円)の大台を突破すると予測してい
る。
有機食品市場は当初、環境保護活動家や健康に人一倍気を使う少数の消費者向けの
ニッチ(すき間)市場と位置づけられていた。しかし最近の英調査会社の調査では8割
以上の消費者が「価格が多少高くても味や品質を重視する」と回答するなど裾野が広
がっている。
有機食品の小売市場のうち、4分の1は農家などの生産者から直接消費者に届けられ
る「ボックススキーム」と呼ばれる仕組みや有機食品の専門業者が占めるが、残りの約
4分の3はスーパー業界が担う。同分野で攻勢をかけているのが、3位のセインズベリ
ーと中堅のウェイトローズだ。
≪専門ブランド強化≫
英紙インディペンデントによると、セインズベリーは「SO(セインズベリー・オーガニック)」
という専門ブランドを立ち上げ、生鮮野菜などを中心とした従来の有機食品に、ピザや
スープなどの加工食品を追加。1000種類を品ぞろえした。同社の生鮮品の市場シェ
アは15%だが、有機食品のシェアは倍の30%に達したという。
同社は1869年創業の老舗で、1995年に低価格戦略で急成長したテスコに抜かれる
まで長らく首位の座に君臨していた。有機食品を軸に巻き返しを図る考えだ。
一方、店舗数や売り場面積こそ小規模であるものの、個性的な品ぞろえで高所得者層
から根強い支持を集めているウェイトローズは、9月から「消費者が100%有機食品だ
けで生活できる」だけの製品を店頭に並べる計画を発表。スナック菓子やインスタント食
品を含めた製品数はセインズベリーの1・5倍の1500に及ぶ。
同社の生鮮品のシェアは4%だが、有機食品はすでにその4倍を押さえている。7月ま
で1年の有機食品売上高伸び率は18・4%に達した。
≪ネット販売も≫
米ウォルマート系のスーパー2位、アスダも有機食品市場で近く新しい戦略を打ち出す
とみられている。
これに対し、最大手のテスコは低価格の輸入品を中心に有機食品を品ぞろえするととも
に、ネットで申し込みを受け付け、産地から消費者に直接製品を郵送するネット通販も試
行している。
米国ではウォルマートが大手食品メーカーなどと提携し、大量生産による低価格有機食
品の販売に力を入れている。
150億ドル(約1兆7500億円)といわれる米国の有機食品市場には及ばないものの、
英スーパー業界は売り上げに占める食品の比率が約半分と極めて高いだけに、有機食
品戦略の優劣が今後のシェア争いに大きく影響しそうだ。(佐藤健二)
ソース FujiSankei Business i. :
http://www.business-i.jp/news/world-page/news/200609010032a.nwc