かつて水田のわきでおまけのように栽培され、食卓でも脇役にすぎなかった枝豆。
最近は従来品種の2倍近い値がつく「ブランド品」が登場している。旬の真夏、熱い
産地間競争が繰り広げられている。
山形県鶴岡市特産の「だだちゃ豆」は、「枝豆の横綱」といわれる。東京・築地市場
で取引される枝豆は通常1キロ500〜600円。その倍の1000円前後の値が付く。
「だだちゃ」は方言で「お父さん」という意味。独特の甘みと香ばしさが特徴だ。
以前は一部農家が細々と栽培、地元にしか出回っていなかった。ところが5年前、
ビール会社のCMで取り上げられ、人気女優がおいしそうにほおばるシーンが話題を
呼んで全国区に躍り出た。
作付面積も最近5年間で約300ヘクタールに倍増。昨年は初めて出荷量が1千トン
を超えた。急激な生産拡大で品質にばらつきが生じ、一時、値が下がったものの、
JA鶴岡は今年、農家に栽培マニュアルの徹底を指示。山形県も高品質の県産品に
お墨付きを与える「山形セレクション」に認定し、出荷段階での品質チェックに目を
光らせる。
このだだちゃ豆と人気を二分するのは新潟県の「新潟茶豆」だ。新潟市(旧黒埼町
小平方地区)特産の「黒埼茶豆」の中でも、食味の良い種だけを選んで育てている。
JA全農にいがたの枝豆は04年度、県が支援してブランド化を進める「ブランド
品目」に指定された。「農協と県が一つになって、だだちゃ豆に挑んでいきたい」と
意気込む。
だだちゃ豆や新潟茶豆の出荷が7月下旬から8月に集中するのに目を付けた
のが、群馬県産の高級品種「天狗(てんぐ)印の枝豆」だ。
栽培地域が標高300〜700メートルに分散している地形的特徴を生かし、短期間
に出荷が集中するのを回避、6月上旬から10月下旬まで、安定的な出荷を図る。
「少しでも早い時期から出荷できれば、顧客を囲い込める」との思惑もある。
東京の市場に近く、全国の13%と生産量1位を誇る千葉県産も巻き込んで、枝豆
市場の競争は過熱するばかりだ。
東京都中央卸売市場の根本邦夫農産花き係長は「枝豆はここ数年、市場の傾向
が『量から質へ』と変わり、味へのこだわりが強くなってきた。これからは出荷量を
増やすより、希少価値に重点を置いたブランド化が求められる」と話している。
http://www.asahi.com/life/update/0813/004.html